バイウィーク明けのブレックスアリーナ宇都宮。秋田ノーザンハピネッツの「潮目を変えたい一戦」は、84-78というスコア以上に濃く、そして苦い40分になりました。
東地区首位を走り連覇を狙う宇都宮ブレックスと、下位に沈みながらもテコ入れを進める秋田。栗原翼のスタメン復帰、マクリーンの古巣対決と、物語性も十分なゲームでしたが、最後の最後で「勝ち切る力」の差を見せつけられた印象です。
今日の試合の注目点
今日のGAME1を語るうえで、外せないポイントを整理しておきます。
- バイウィーク明けで両軍ほぼフルメンバー
秋田はケガやコンディション不良でなかなか揃わなかったロスターがようやく整い、宇都宮も主力が出揃った状態。ケンゾーHCが言うように、「本当にやりたいバスケット」をぶつけ合う条件はそろっていました。 - 栗原翼、開幕戦以来の出場でいきなりスタメン
ディフェンスの柱として期待されながら離脱していた栗原が、いきなりスターター起用。本人も「ディフェンスのやり切り」を強調していましたが、その言葉通り、ゲームを通じてハッスルしまくりでした。 - ニュージーランド対決:フォトゥ vs ウェッツェル
インサイドでは、ニュージーランド代表としても知られるフォトゥとウェッツェルの“キウイ対決”が実現。お互いにゴール下だけでなく、ドライブや3Pも絡めて攻め合う、見応えしかないマッチアップでした。 - マクリーンの古巣対決
つい最近まで宇都宮でプレーしていたマクリーンが、わずか1か月で秋田に合流してのいきなりの古巣対決。宇都宮側が早めに送り出してくれたというエピソードも含めて、両クラブの信頼関係も感じさせる一戦でした。 - 終盤の「3Pの差」
勝負どころで高島・遠藤・ニュービル・ジェレットと、宇都宮はことごとく外を決め切り、秋田は追い上げきれず。ここが東地区首位と最下位近辺の「精度」「勝ち慣れ」の差だったと言わざるをえません。
試合前から「連覇を目指す宇都宮」「なんとしても流れを変えたい秋田」という構図ははっきりしていました。その中で、秋田は「ディフェンスでロースコアゲームに持ち込む」というアイデンティティをどこまで遂行できたか──そこがこの試合の評価ポイントになってきます。
試合結果・速報
2025-26B1 12/6(土)第12節 VS宇都宮ブレックス GAME1
| チーム | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 秋田ノーザンハピネッツ | 16 | 22 | 24 | 16 | 78 |
| 宇都宮ブレックス | 17 | 24 | 20 | 23 | 84 |
※最終スコア:宇都宮ブレックス 84-78 秋田ノーザンハピネッツ
スターティング5
秋田:#2 栗原翼/#6 赤穂雷太/#10 ヤニー・ウェッツェル/#17 中山拓哉/#25 キアヌ・ピンダー
宇都宮:ニュービル、比江島、フォトゥ、高島、鵤(など主力中心の布陣)
1Q|栗原スタメン復帰で空気が変わるも、宇都宮の3Pに先行を許す
試合開始から、赤穂がいきなりリングアタック。フォトゥにリバウンドを抑えられながらも、ウェッツェルのキックアウトから栗原が3Pを沈め、「ディフェンスの男」がいきなりオフェンス面でも存在感を示します。
ニュービルには赤穂、中山がマッチアップ。アグレッシブに当たりにいく分、立ち上がりから連続でファウルを吹かれ、ここは秋田らしい“ギリギリを攻めるディフェンス”が裏目に出た場面でもありました。
宇都宮は高島の3P、比江島のフローター気味のドライブ、フォトゥのペイントアタックと、「外→中→ドライブ」のバリエーションで秋田の守備を揺さぶってきます。
それでも秋田は、ピンダーのドライブからのキックアウトで元田の3Pが決まり、ウェッツェルがリバウンドで気を吐いて16-17。数字以上に、フィジカルと当たりの強さで「やり合えている」1Qでした。
2Q|ニュージーランド対決が白熱、マクリーンも古巣相手に存在感
2Qはまさに「NZビッグマン対決」。フォトゥがゴール下で押し込めば、ウェッツェルも負けじとアタック。お互いがペイントで主導権を取り合う中、比江島のキックアウトから鵤の3Pが決まり、宇都宮がじわっとリードを広げます。
秋田はピンダー、ウェッツェルがエンドワンで応戦し、ボールムーブからニュービルに3Pを決められても、高島の3Pを被弾しても、ウェッツェルのピック&ポップ3P、栗原の鋭いドライブで流れを渡しません。
ここで効いていたのが、マクリーンのエナジー。元チームメイトたちをよく知る彼が、スクリーン、リバウンド、トランジションで地味ながら効きまくり。赤穂のドライブからマクリーンのダンクが飛び出したシーンは、完全にベンチも沸く“スイッチプレー”でした。
前半終盤、中山との合わせから再びマクリーンがゴール下で存在感を示し、38-41で折り返し。数字だけ見ればビハインドですが、ベンチの空気はむしろ「いけるぞ」という雰囲気すら感じられる内容だったと思います。
3Q|点の取り合いを制しかけた秋田、ウェッツェル中心に一気に逆転
後半立ち上がりは、中山のドライブからウェッツェルのフィニッシュで40-41。ここから試合が一気にオフェンスゲームにシフトします。
中島(宇都宮)がドライブからエンドワンをもぎ取れば、ピンダーと比江島が互いに3Pを決め合う“スナイパー合戦”。ブレアリの空気が一気にヒートアップする時間帯でした。
秋田側で流れを引き寄せたのは、やはり栗原。ドライブからのエンドワンでファウルをもらいながら決め切り、ベンチとブースターにエナジーを注入します。ここは「ディフェンスの人」というイメージを超えた、気合いのオフェンスでしたね。
さらに、メザーのノールックパスから赤穂がバックカットでレイアップ。インサイドではウェッツェルが冷静にファウルをもらいながらフリースローを沈め、ついに61-60と逆転。
秋田らしい“タフディフェンス→走る→シンプルに決め切る”流れが、ようやく今季初めてフルコースで出たと言ってもいい3Qでした。
4Q|64-61からの失速…宇都宮の「勝ち切る3P」に屈する
勝負の4Q、秋田はウェッツェルのドライブで64-61とリードをキープ。ここをしのげばゲームの主導権を完全に握れた…という場面でしたが、宇都宮はやはり簡単には崩れません。
高島、遠藤に連続3Pを決められ、一気に64-67に。ここでケンゾーHCがタイムアウトを取り「我慢の時間」に入りますが、再開後もニュービルがタフな3Pを沈めてくるあたり、さすがはチャンピオンチームとしか言いようがありません。
さらに悪いことに、復帰したジェレットにも3Pを決められて68-78と二桁ビハインドに。ここはディフェンスローテーションが一瞬遅れたところを、ことごとく射抜かれた印象です。
それでも秋田は、ピンダー&ウェッツェルのハイロー、中山のニュービルからのスティール→ウェッツェルのダンク、赤穂の3Pと最後まで諦めずに追いすがります。
ただ、「ここ一本止めたい」場面での3Pディフェンスと、「ここ一本決めたい」自分たちのアウトサイドが噛み合わず、スコア以上に「勝ち切る術」の差を痛感させられる敗戦となりました。
今日のGOOD & 反省(秋田視点)
- GOOD:栗原のスタメン復帰とエナジー
長いリハビリの末に戻ってきたとは思えないほど、1on1ディフェンスもトランジションもフルスロットル。3Pやドライブも決まり、「ディフェンスのスイッチ」としての役割をしっかり果たしました。 - GOOD:ウェッツェルとピンダーのインサイド主導権
フォトゥ相手に一歩も引かず、得点源としても機能。ハイローやピック&ポップなど、組み合わせのバリエーションも見えてきたのは収穫です。 - 反省:クラッチタイムのオフェンス遂行力
64-61からの時間帯、セットオフェンスでの迷いと、外に逃げてしまう時間が続きました。誰が「この時間帯のエース」なのか、コート上で決め切れなかった印象です。 - 反省:外角シュートへの対応
高島・遠藤・ニュービル・ジェレットと、わかっていても止めきれなかった4Qの3P群。ヘルプに行くのか、スイッチするのか、ローテーションのルールをもう一段整理する必要があります。
ハイライト動画
試合全体の流れや、ここでは書ききれなかったビッグプレーの数々は、公式ハイライトでじっくり堪能できます。
ケンゾーHCコメント
ケンゾーHCは試合後、「選手がなかなか揃わない中で迎えたバイウィーク明けのゲームだったが、ようやくメンバーが揃い、自分たちのやりたいバスケットを表現できた部分は多かった」と前向きに総括しています。
一方で、「第4Qの勝負どころでオフェンスから崩れてしまった」と、終盤の遂行力不足にははっきり言及。ここを乗り越えない限り、連敗から抜け出せないという危機感もにじみ出ていました。
また、マクリーンの古巣対決についても言及し、「宇都宮さんで1か月プレーしていた彼が秋田に来てくれたこと、そして練習スケジュールの都合も含めて早く送り出してくれたことに感謝している」とコメント。相手クラブへのリスペクトを忘れない姿勢も、ケンゾーHCらしさが出た部分です。:contentReference[oaicite:8]{index=8}
動画でフルコメントをチェックしたい方はこちら。
選手コメント(秋田&宇都宮)
まずは、今日スタメン復帰を果たした栗原翼のコメント。
彼は「自分たちはディフェンスのチーム。どれだけ相手をロースコアに抑え、タフショットを打たせるかがポイントだった」と、あくまで軸をディフェンスに置いたうえで、終盤にバタついてしまったことを反省材料として挙げていました。
また、出場できなかった期間について「どうにもできないもどかしさがあったが、その分、映像を見て『自分が出たらこう守る、こう攻める』というイメージ作りを続けてきた」とも。
「チームディフェンスを遂行する前に、まず一人で守り切る気持ちが一番大事」という言葉には、秋田バスケの魂みたいなものが凝縮されています。
対する宇都宮側では、この日が今季初出場となった#7 小川敦也が、試合後インタビューに登場。公式Xでは「この日を待ってました!」というコメントとともに、インタビュー動画が紹介されていました。
内容としては、久々の実戦の感触や、守備からエナジーをもたらすことへのこだわりなど、ブレックスらしい“ハードワーク”を強調する発言が中心。秋田としては、こうした若手の勢いをもう一枚二枚、ベンチからぶつけていきたいところでもあります。
ニュービルやフォトゥ、比江島ら主力陣も、クラッチタイムで自分たちのショットを沈めたことよりも、「ディフェンスで我慢し続けた結果がオフェンスに繋がった」と語っており、勝ち切るチームのメンタリティを随所に感じるコメントでした。(※各コメントは公式メディア・配信をもとに要旨をまとめています)
最後に──宇都宮3連戦の初戦を落として見えたもの
84-78というスコアだけを見ると、「惜しかった」で終わらせがちなゲームです。
でも、今の秋田に必要なのは“惜敗”ではなく“勝ち切り”。その意味で、今日のGAME1は「課題がはっきりした前向きな敗戦」として、しっかり記憶に刻んでおくべき試合だと感じます。
ポジティブに言えば──
バイウィークを経て、栗原が帰ってきたことでディフェンスの圧は明らかに一段階上がりました。マクリーンも含め、ローテーションの形がようやく見え始めています。ウェッツェル&ピンダーのインサイドは、東地区トップレベルの破壊力を持っていることも証明されました。
一方で、辛口に言えば──
4Qのオフェンスは、まだまだ「誰の時間なのか」が曖昧です。中山がゲームメイクで時間をコントロールしつつも、最後の最後、「この一本は俺が決める」という声がもう1つ2つ、コート上で聞こえてきてほしい。
アウトサイドディフェンスも、スカウティングで分かっていたはずのシューターたちに、打たせたくない“ゾーン”のショットを何本も許してしまいました。ここはローテーションのルール徹底と、コミュニケーションの質を上げるしかありません。
宇都宮との3連戦はまだ始まったばかり。
GAME2、GAME3と続く中で、今日見えた課題──
- クラッチタイムの「エースの顔」を誰がするのか
- 3Pディフェンスのルール徹底と遂行度
- マクリーンを含めたセカンドユニットの攻守バランス
このあたりをどこまで修正できるかで、このカードの意味合いも、シーズン後半戦の景色も変わっていくはずです。
秋田ブースターとしては、もちろん悔しい。
でも、この試合内容なら、まだまだ吠えられます。
選手たちは「諦めていない」どころか、「ここからひっくり返してやる」と目をギラつかせているはず。
次のGAME2こそ、ブレアリの大観衆を静めるような「秋田のタフネス」を見せつけてほしいですね。
さあ、まだ宇都宮2連戦は続きます。ここからの明日の試合で、どれだけ成長した姿を見せられるか──一緒に最後まで見届けましょう。


※本記事の試合情報・コメント要旨は、B.LEAGUE公式サイトおよび秋田ノーザンハピネッツ/宇都宮ブレックスの公式発信をもとに構成しています。
