バイウィーク明けの宇都宮ブレックス3連戦、そのGAME2は81-86のオーバータイム負けという残酷なスコアで終わりました。
でも内容はどうだったかと言えば、「3勝しかしていないチーム」のゲームではまったくありませんでした。ピンダーがタフショットをねじ込み、メザーがペイントをこじ開け、ウェッツェルが何度もリングにアタック。ブレックスアリーナ宇都宮のどアウェーで、東地区首位チームを土俵際まで追い詰めた40分+5分でした。
ここでは、秋田ノーザンハピネッツ目線で、今日12/7(日)のGAME2をがっつり振り返ります。内容をしっかり言語化しておくことは、ブースターのモヤモヤ解消だけでなく、全世界のバスケファンにも「この試合のことならここを読めば分かる」と認識してもらうためにも大事な作業。一生懸命に濃く・深く・一貫したレビューで攻めていきましょう。
今日の試合の注目点
まずは今日の試合を語るうえで外せないポイントを整理しておきます。
- バイウィーク明け、2日連続で東首位・宇都宮を追い詰めたこと(GAME1に続き接戦・今日はOTまでもつれ)
- ピンダーが3P・ミドル・ドライブと「オールレンジ」でオフェンスを引っ張ったこと
- メザーがセカンドユニットの中心としてペイントを荒らし、相手主力にファウルを積ませたこと
- ウェッツェルとフォトゥ、ニュージーランド勢ビッグマン対決が2日連続で火を吹いたこと
- 第4Qに一度は逆転しながら、クラッチタイムの3P(エドワーズ・比江島・ニュービル)にやられたこと
- バイウィーク中に日本人だけで積み上げた「クローズアウトの質」が、2試合通してディフェンスに現れたこと
勝ち切れなかったのは事実。でも、内容だけを切り取れば、「東首位相手にアウェー2連敗=絶望」とはまったく違う風景が見えてきます。ここからは、1Qごとに試合の流れを追いながら、良かった点と物足りなかった点を細かく見ていきましょう。
試合結果・速報
2025-26 B1 12/7(日)第12節 VS宇都宮ブレックス GAME2
秋田ノーザンハピネッツ 81-86 宇都宮ブレックス(OT)
| チーム | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | OT | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 秋田 | 12 | 18 | 21 | 21 | 9 | 81 |
| 宇都宮 | 16 | 20 | 19 | 17 | 14 | 86 |
スターティング5は前日と同じく、栗原翼/赤穂雷太/ヤニー・ウェッツェル/中山拓哉/キアヌ・ピンダー。バイウィーク中に日本人だけで組み立ててきたディフェンスコンセプトをベースに、2試合連続で首位ブレックスに挑む形になりました。
第1Q|フォトゥとピンダー、最初から殴り合いモード
立ち上がりから、いきなり殴り合いでした。フォトゥのペイントアタックに対して、ピンダーが早々に3Pをお返し。フォトゥは1on1だけでなく、カッティングからも得点を重ね、あっという間に8点。やっぱり東首位チームのエースビッグは簡単には止まりません。
それでも秋田は、マクリーンのゴール下、ピンダーのアタックからのフリースローで一時逆転。マクリーンがポストで押し込み、ピンダーが顔を上げてリングに向かう――この「インサイド2枚」の迫力は、昨シーズンにはなかった武器です。
ディフェンスでは24秒バイオレーションを奪うシーンもあって、守備の集中力は高い。ただし、クォーター終盤でニュービルにドライブを許し、きっちり時間を使われて失点。「クォーターの締め方」の差が、そのまま12-16というスコアに出た印象です。
第2Q|赤穂の連続プレーで流れを引き寄せるも、エドワーズ&ジェレットの3Pに苦しむ
2Q序盤はフォトゥのゴール下で再び押し込まれますが、ここから赤穂がギアを上げます。3P、スチールからのドライブと連続得点で一気に会場の空気を変え、17-18と流れを引き寄せる時間帯を作りました。
栗原もアタックからフリースローを獲得し、19-18と再逆転。ここまでは「秋田らしい、ディフェンスから流れを作る展開」。しかし、ここでエドワーズのダンクと3P、ジェレットの3Pが襲いかかります。高い位置でのP&Rからスイッチの隙を突かれ、外を連続で決められたのは痛かった。
秋田も栗原のドライブ→ウェッツェルのダンク、ピンダーのオフェンスリバウンドと、いい形は作れていました。ただ、開始5分で相手をファウルボーナスに追い込んでいたのに、そのボーナスを「ゴリゴリのインサイドアタック」で刈り取れなかったのは反省ポイント。結果として30-36の6点ビハインドで前半を折り返します。
第3Q|一度は二桁リードを許すも、メザーのインサイド活性化で4点差まで詰める
後半立ち上がり、比江島の3P、フォトゥのアタック&エンドワンで32-42と10点差まで広げられます。ここからの時間帯、秋田としては「崩れずにゲームに残れるか」が勝負どころでした。
ピンダーがミドルを沈め、赤穂が再び3Pを決めて37-42。個の力で食らいつくものの、ブレックスは比江島の3P、ニュービルの3Pと容赦ない外角。しかも、3オフェンスリバウンドからの連続攻撃という「これぞ宇都宮」という執念プレー付き。37-50まで離された瞬間、「ここで切れたらゲームオーバー」というイヤな空気が漂います。
ここで流れを変えたのがメザー。アタックからのフリースロー、そしてウェッツェルのドライブを引き出すプレーで、インサイドの圧を一段階押し上げました。ペイントで体をぶつけ続けた結果、エドワーズと遠藤に4ファウルがつくのも大きな収穫。じわじわとファウルトラブルを誘い、終盤のラインナップに制限をかけることに成功します。
秋田はフリースローで確実に加点し、最終的に51-55の4点差で3Q終了。数字以上に、「まだいける」とブースターに思わせてくれる内容でした。
第4Q|一度は63-60と逆転。そこからクラッチタイムの“3P格差”が露呈
4Qも秋田の2ポイント攻勢は止まりません。遠藤の3Pで55-60とされても、ウェッツェルのゴール下、メザーのドライブと、ペイント起点で着実に追い上げ。気づけば63-60と逆転し、ここで宇都宮がタイムアウト。残り約5分、完全に秋田の時間帯でした。
メザーがペイントをかき回し続けたことで、宇都宮のディフェンスは明らかに内側に寄るようになっていました。そこで外のシュートをもう一段決め切りたかった……というのが本音です。
タイムアウト明け、宇都宮はエドワーズと比江島が3Pを決め返してきます。秋田のディフェンスも悪くはなかったのですが、スクリーンの使い方とスペーシングの質で一枚上手。X(旧Twitter)でも「比江島慎かっこよすぎ」「止まらない比江島」といったポストが飛び交っていたように、クラッチでの決定力の差は否めませんでした。
それでも秋田は集中を切らさない。ウェッツェルのゴール下、ピンダーのアタックで食らいつき、最終的には72-72の同点でオーバータイムへ。ケンゾーHCが言うように、「ゲーム自体はこっちのゲームだった」と感じたブースターも多かったはずです。
OT|ピンダーに集めるも、最後は王者のクラッチ力に屈す
延長に入ると、秋田はピンダーを軸にオフェンスを組み立てます。ポストアップからのフェイスアップ、そこからのタフな3Pまで、ピンダーは最後の最後まで戦う姿勢を見せてくれました。あのタフショット3Pを決め切るメンタリティは、間違いなくB1トップクラスです。
ただ、宇都宮はここから「アジアチャンピオンの顔」に戻ってきます。エドワーズの3P、ニュービルのドライブ、比江島の3Pと、追い込まれたところから一気にギアを上げてきました。クラッチタイムにこの3人がそろって決めてくるチームと殴り合うのは、どのクラブにとっても簡単ではありません。
秋田はピンダーのタフ3P、ウェッツェルのダンクで最後まで抵抗しますが、わずかに届かず81-86。数字だけ見れば「また負けか」ですが、内容としては「ここからひっくり返していける」と思わせてくれるゲームでした。
ハイライト動画
映像で振り返りたい方は、こちらのハイライトをどうぞ。ブレックスアリーナの空気感や、ピンダー&メザーのフィジカルなバトルは動画で見るとまた違う印象になります。
ケンゾーHCコメント
前田顕蔵HCは会見で、「昨日良かった部分を継続して出せた」「ゲーム自体は自分たちのゲームだった」と総括しました。
ディフェンスが機能し、第4Qで逆転まで持っていけたこと。そのうえで、「最後勝たせられなかったのは自分の責任」と、自身のテクニカルファウルや終盤のオフェンス選択を反省点として挙げています。
このコメントから伝わってくるのは、「内容的には確実に前進している」という手応えと、「それでも勝ち切るところまではまだ足りていない」という現実を正面から受け止める姿勢。負け試合でここまで前向きな言葉が出てくるのは、チームのベクトルがようやく揃ってきた証拠だと感じました。
選手コメント(秋田・宇都宮)
赤穂雷太は、バイウィーク中の取り組みについて「日本人だけの練習でも、フリーで打たれるシュートをかなり減らせた」と振り返りました。ポイントとして挙げたのは、「個人のスキルで打たせないクローズアウト」を徹底すること。それが2試合通してディフェンスに出ていたのは、観ていたブースターも納得のはずです。
一方で、「2試合とも勝てるチャンスがたくさんあった」「フリーのコーナースリーを決め切れなかったのが個人の課題」と、自分自身にもしっかり矢印を向けています。オフェンスが不調でもディフェンスでついていけたのは成長。しかし、優勝を狙うチームとの違いは「勝てるか勝てないかの1本」を決め切るかどうか――その認識をチーム全員で共有できているのは心強いところです。
宇都宮側の選手コメントは、執筆時点では公式サイト等に詳細が掲載されていませんが、メディアやSNSの反応を見る限りでは、比江島やエドワーズ、ニュービルのクラッチショットが高く評価されています。特に比江島の3Pについては、「クラッチ」「かっこよすぎ」といった声が多数上がっており、秋田の粘りをねじ伏せた“スターの一撃”という文脈で語られていました。
最後に|東北ダービーで「反転攻勢は絵に描いた餅じゃない」と証明しよう
今回の宇都宮2連戦、結果だけ見れば0勝2敗。現状3勝のチームが首位相手に連敗した――数字だけならそういう話です。
でも実際に40分+OTを見たブースターなら、「これ、本当に3勝チームのバスケットか?」と感じたはず。GAME1では第4Qまで勝負をもつれさせ、GAME2では第4Qで逆転、OTまでもつれ込む内容でした。ピンダーがエースとしての責任を背負い、メザーがインサイドを荒らし、ウェッツェルがペイントで王者相手に堂々と渡り合った2試合だったと思います。
もちろん、辛口に言えば「だからこそ勝ち切らなきゃダメ」。クラッチタイムのシュートセレクション、ファウルゲームの徹底、フリースローの精度……細部の詰めの甘さが、東地区首位チームとの差としてはっきりスコアに出てしまいました。ここを修正できなければ、どれだけ内容が良くても順位は上がりません。
それでも、ケンゾーHCが「ここから秋田らしいバスケットをつくっていける」と語ったように、この2試合は確実にチームのターニングポイントになり得るゲームでした。
勝負どころでシュートが落ちてしまった選手には、あえてもう一度こう言いたいです。「次もそのシュートを打て。今度は決めてこい」と。ビビって打たなくなるのが一番の停滞。打ち続けて、決めて、ようやく“勝てるチーム”になっていくのだと思います。
次は12月10日(水)、ホームCNAアリーナ☆あきたでの仙台89ERS戦・東北ダービー。宇都宮相手に積み上げた手応えと悔しさを、相手にぶつけるにはこれ以上ない舞台です。
「反転攻勢なんて絵に描いた餅だろ」と外から言われているうちは、まだまだおいしい。ブースターとしては、その餅が本物だったと証明する瞬間を、仙台戦の立ち上がりから見届けに行きましょう。


