宇都宮ブレックスとのアウェー2連戦で、内容的には「チャンピオンと殴り合えるじゃないか」と希望を見せた秋田ノーザンハピネッツ。
そのわずか3日後、ホームCNAアリーナ☆あきたで迎えたのは、東北ダービー・仙台89ERS戦でした。
結果はご存じの通り、65-92の27点差完敗。
2階席からもブースターが帰り始めるほどのワンサイドゲームになり、「宇都宮戦は何だったの…?」と頭を抱えた方も多かったはずです。
この記事では、試合の流れをQごとに振り返りつつ、仙台にやられたポイント、ケンゾーHC・元田選手・相手側のコメント、そしてブースター目線で感じた「チームが立て直すために必要なこと」を整理していきます。
悔しい夜だからこそ、感情だけで終わらせず、次のシーホース三河戦に向けた材料にしていきましょう。
今日の試合の注目点
この仙台戦は、単なる1試合ではなく、秋田にとって「反転攻勢が本物かどうかを測る試金石」でした。
前節の宇都宮2連戦では、最後に力尽きたとはいえ、ディフェンスの粘り・ピンダー&ウェッツェルのインサイド・栗原の復帰など、今季で一番「秋田らしさ」が出た2試合でした。
だからこそブースターの多くが、
- 同じディフェンス強度を、東北ダービーでも継続できるのか
- 仙台のゾーンディフェンスをどう崩すのか
- リバウンドとルーズボールで、どこまで食らいつけるのか
このあたりに注目していたと思います。
対する仙台は、ここまで10勝11敗で東地区6位。一方の秋田は3勝18敗で東地区最下位と、数字だけ見れば下位チーム同士ですが、シーズン平均得点・FG%・リバウンド数など、スタッツ上は仙台が一歩リードしている状況でした。
さらに仙台は、ネイサン・ブース、カルバー、エルダーヴィッチ、トゥーレらサイズとスキルのある外国籍をそろえた大型補強組。直近の試合ではオフェンスが大きく停滞したものの、ハマったときの爆発力は東地区でも上位クラスです。
そんな相手に対し、秋田はスタメンに元田大陽を起用。
「日本人シューター不在」と言われ続けている中で、シュータータイプの元田を先発に据えたケンゾーHCの采配は、非常にポジティブなメッセージでもありました。
……だったのですが、フタを開けてみると、宇都宮戦とは別チームのような、ソフトで受け身な立ち上がり。
ここからは、実際のゲームの流れを追いながら、その「崩壊ポイント」を見ていきます。
試合結果・速報
2025-26 B1 12/10(水)第13節 VS仙台89ERS
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 秋田ノーザンハピネッツ | 12 | 17 | 14 | 22 | 65 |
| 仙台89ERS | 22 | 22 | 34 | 14 | 92 |
最終スコアは65-92。第3Qだけで34失点を喫し、完全に試合を壊してしまいました。
スターティングファイブは、
- #2 栗原翼
- #6 赤穂雷太
- #10 ヤニー・ウェッツェル
- #12 元田大陽
- #25 キアヌ・ピンダー
という布陣。
宇都宮戦から中山→元田に入れ替えて、外の脅威を作ろうとした意図は見えましたが、仙台のゲームプランと強度の前に、完全に後手を踏む形になりました。
1Q:ディフェンスの強度不足、リバウンドで主導権を握られる
試合の入りから、秋田のディフェンスは明らかにソフト。
ネイサン・ブースにリバウンドを立て続けに取られ、エルダーヴィッチのドライブであっさり0-4と先行を許します。
オフェンスでは、ピンダーへのハイロー、渡辺と赤穂の3Pの打ち合い、カルバー&ウェッツェルのゴール下などで何とか食らいつき、一時は9-13と射程圏内。
しかし、問題はセカンドチャンス。リバウンドで優位に立った仙台は、ブースのトレーラー3Pで9-18と一気にリードを広げます。
仙台が連続でターンオーバーを犯す時間帯もありましたが、秋田はそこをスコアに結び付けられず。
「守っても走れない」「相手のミスを流れにできない」嫌な立ち上がりで、12-22と二桁ビハインドで1Q終了です。
2Q:メザーが流れを変えかけるも、ゾーン+サイズに苦しむ
2Qも、先にペースを握ったのは仙台。トゥーレのミドル、荒谷のドライブで点差を広げられ、スコアは12-26に。
ここでようやく中山の3P、ウェッツェルのフックなどで細かく返していきますが、エルダーヴィッチのミドル、渡辺の3Pと、要所要所で決められてしまいます。
流れを変えかけたのは、ベンチから出てきたメザー。
リバウンドに絡み、ドライブで仕掛け、ファストブレイクで赤穂の3Pをお膳立て。ようやくCNAアリーナに「お、行けるか?」という空気が戻り、22-35で仙台がタイムアウトを取ります。
タイムアウト明けも、マクリーンのジャンパー、元田のワイドオープン3Pと良い形は作るものの、カルバーのゴリ押しドライブを止めきれず。
結局29-44の15点ビハインドで前半終了。「悪い入りを引きずったまま、リバウンドとインサイドのミスマッチを修正できない」まま折り返してしまいました。
3Q:ゾーンに完封され、試合が決壊した最悪の10分
勝負を決めてしまったのが3Q。
エルダーヴィッチが早々に3ファウルとなるも、その直後にブースの3Pで29-47。さらに船生のスチールドライブで一気に流れを持っていかれます。
秋田も点の取り合いの中で、ピンダーのアタックやウェッツェルの得点で一瞬は39-64まで戻しますが、ここで仙台のゾーンディフェンスが発動。
外にはプレッシャー、インサイドには長い手足とサイズ。秋田はボールを回すだけで終わるポゼッションが増え、
- ハイポストにボールが入らない
- 合わせのカッティングが出てこない
- 結局終盤で苦しい3Pか、個人技頼みのドライブ
という「何年も見てきたゾーン攻略の課題」が、そのまま露呈する形になりました。
中山の久々の3Pで「さあこれから」というところで、荒谷にきれいなバックカットを決められる場面も象徴的。
秋田の一瞬のスキを、仙台は確実についてきました。
気づけばスコアは43-78。ケンゾーHCは後半に使えるタイムアウトをすべて使い切りましたが、エルダーヴィッチがオフェンスをかき回し続け、カルバーの3Pでトドメ。
2階席の一部ブースターが帰り始めるのも無理はない、そんな3Qでした。
4Q:若手と新戦力は意地を見せるも、焼け石に水
4Qは、栗原の3Pでスタートするも、すぐさま船生にお返しの3P。
元田が3Pファウルをもらい、3本とも沈めるあたりは、シューターとしてのメンタルの強さを感じさせました。
栗原とマクリーンの合わせから51-83、サードチャンスをピンダーのアタックでねじ込んで53-83と、ようやく「秋田らしい粘り」が少しだけ出てきます。
終盤にはスチールからピンダーのゴール下、ウェッツェルのアタック&エンドワンも飛び出しました。
しかし、残り3分28秒でカルバーの3Pが再び突き刺さり、仙台のリードはほぼ動かず。
スコアだけ見れば4Qは22-14と勝っていますが、試合の勝敗にはまったく影響のない「ガーベッジタイムの得点」に近い内容でした。
ハイライト動画
試合の全体像や仙台のゾーンの迫力、秋田の良かったシーンをコンパクトに振り返りたい方は、こちらのハイライト動画をどうぞ。
ケンゾーHCコメント
試合後の前田顕蔵HCは、
「試合の入りから非常に緩く、やりたいバスケットをまったく出せなかった」と率直に自己批判。
宇都宮戦で、「こういうバスケットをしていこう」という2日間を経験した直後だっただけに、
「3日前にああいう試合をして、今日すべてを失い、また今週末がやってくる」という言葉には、指揮官自身のフラストレーションと焦りがにじんでいました。
さらに、久しぶりのホームゲームでこのような内容になってしまったことについて、
「応援されることは当たり前ではない」「戦う姿を見せないといけないのに戦っていない」とブースターへの申し訳なさも繰り返し口にしています。
言葉としてはかなり重く、覚悟も感じるコメントでした。
あとは、それを次のゲームプランとローテーション、そして40分間の準備にどう落とし込めるか。そこが問われます。
選手コメント
この試合でスタメン起用された元田大陽選手は、試合後のコメントで、
「今までで一番良くない内容の試合。やってはいけないゲームだった」と、かなり強いトーンで自己評価をしています
ターンオーバーから自分たちがストレスを溜めてしまい、そこからプレーがソフトになっていったこと。
ドリブルで抜かれてからのカバー、守り切った後のリバウンドといった、チームディフェンスの基礎がまったくできていなかったこと。
そして「誰かが悪い、ではなく全員の責任」と繰り返していたのが印象的でした。
元田自身は、ワイドオープン3Pやファウルをもらっての3本成功など、要所で光るプレーも見せましたが、「スタメンシューターとして試合をひっくり返すほどのインパクトには届かなかった」というのが正直なところ。
それでも、彼のように言葉とプレーで危機感を示せる日本人選手の存在は、今のチームには絶対に必要です。
一方、勝利した仙台側では、タシュニーHCが「チームとして全体を通して良い試合ができた」「最近はオフェンスで苦しんでいたが、今日はスムーズに展開できた」と、攻守の噛み合いに手応えを口にしていました。
ネイサン・ブースは、この試合でB1通算300本目となる3Pを決めるなど、要所で存在感を発揮。
仙台にとっては「オフェンス復調+節目の記録」という、非常にポジティブな東北ダービーになりました。
ブースターの声と見えてきた課題
試合後、SNSや掲示板では、多くの秋田ブースターから厳しい声が上がりました。
内容を要約すると、だいたいこんなところでしょうか。
- 「宇都宮戦で見せたディフェンスはどこへ?なぜ同じ強度を出せないのか」
- 「ゾーンディフェンスを崩せない問題は、何年も前から改善されていない」
- 「シゲ、多田、や古川のように、締める場面で頼れる日本人シューター&リーダーがいない」
- 「ボールをもらうのを躊躇している選手が多く、シュートが人任せに見える」
- 「エナジーの問題だけで片づけるには、スタッツも内容も悪すぎる」
感情的な表現も多いですが、根っこには「このクラブをどうにか強くしたい」という愛情とフラストレーションが確かに存在しています。
個人的に、今回の仙台戦で特に深刻だと感じたのは、次の3点です。
- 試合の入りの「緩さ」が続いていること
宇都宮戦でも立ち上がりは苦しんでいましたが、この日はディフェンスの圧・コンタクトの強さがさらに低下。ブースターから「負け前提で入っているように見えた」という声が出ても仕方ない入りでした。 - ゾーンに対するオフェンスの引き出し不足
ハイポスト&ショートコーナーの活用、バックカット、エントリーパスの角度作りなど、基本的なゾーンアタックが整理されているように見えませんでした。これは正直、今季だけの問題ではありません。 - リーダーシップの不在
嫌な流れを断ち切る「一声」や「一手」が、コート上からもベンチからも見えにくい試合でした。かつての古川や、千葉前のシゲのように、言葉とプレーで締める存在が今の秋田には足りていません。
HCやフロントへの批判も増えていますが、「誰か一人を替えればすべて解決」というほど単純な問題ではないと感じます。
システム、スカウティング、練習の質、ロッカールームの雰囲気……すべてを総点検するタイミングに来ているのは間違いありません。
最後に:ここから秋田が取り戻すべき「3つの秋田らしさ」
東北ダービーでの27点差敗戦は、さすがに言い訳できない内容でした。
宇都宮戦で積み上げたものが、一気に崩れ落ちたように見えたのも事実です。
それでも、シーズンはまだ続きます。
次のホーム2連戦(12月13日・14日のシーホース三河戦)は、「このまま沈むのか、それともここから這い上がるのか」を決めるターニングポイントになるでしょう。
個人的に、秋田がここから取り戻してほしい「秋田らしさ」は、次の3つです。
- 40分間途切れないディフェンスの圧
相手の1stオプションを消し続ける、ハーフコートでの我慢強さこそが秋田のアイデンティティ。どれだけシュートが入らなくても、そこだけは絶対に守り通してほしい部分です。 - リバウンドとルーズボールへの執着
仙台戦のように、セカンドチャンスを簡単に献上していては、どんな戦術も機能しません。ピンダー、ウェッツェル、マクリーンに加えて、日本人選手も「1本でも多く絡む」意識をもう一段ギアアップしてほしいところ。 - 日本人選手の自信と覚悟
元田、栗原、赤穂、中山、そしてベンチメンバー。彼らが「自分が決める」「自分が止める」と覚悟を持ってプレーしない限り、チームは変わりません。宇都宮戦のような表情を、もう一度全員で取り戻したいですね。
ブースターとしては、もちろん厳しいことも言いたくなります。
それでも、声を上げ続けるのは、「まだこのクラブに期待しているから」です。
次の三河戦では、まずは試合の入りから、「今日は違うぞ」と言わせるようなエナジーとディフェンスを見せてほしい。
そして、ゾーンに対しても、同じやられ方を繰り返さない工夫をコート上で体現してほしい。
仙台に完敗した夜を、「あの日がターニングポイントだった」と笑って振り返れるように。
これからも、roukyuu.comは秋田ノーザンハピネッツを全力で追いかけていきます。
※本記事の試合情報・コメントの要約は、秋田ノーザンハピネッツ公式サイトおよびB.LEAGUE公式サイト、各クラブ公式発信の情報をもとに作成しています。
