仙台戦の大敗からわずか3日。「本当に反転攻勢なんてあるのか?」と半信半疑のままCNAアリーナ☆あきたに足を運んだブースターも多かったと思います。
相手は西地区上位、9連勝中と勢いに乗るシーホース三河。こちらは東地区最下位争いの秋田ノーザンハピネッツ。数字だけ見れば厳しいマッチアップですが、宇都宮戦で見せた激闘を「幻」にしたくない一戦でもありました。
結果は67-79のダブルスコアに近い敗戦。ただし中身を分解していくと、前半46点のオフェンスや中山拓哉の18得点、栗原翼のゲームメイクなど、光ったポイントも確かに存在します。一方で、ゾーンディフェンスへの対応とピンダーの退場という、三河に流れを渡してしまった要因もハッキリ見えました。
この記事では、「仙台戦から何が変わり、どこがまだ変わっていないのか」という視点で、ブースター目線かつ少し辛口でこのGAME1を振り返っていきます。
今日の試合の注目点
仙台大敗からわずか3日、信頼を取り戻せるか
まず一番の注目はやはり「チームとして戦える姿を取り戻せるか」でした。仙台戦ではディフェンスの強度が低く、ゾーンを全く崩せないまま大量失点。ブースターからも「これはさすがに言い訳できない」「チームがバラバラに見える」と厳しい声が噴出しました。
そのわずか3日後のホーム・三河戦。「また同じ試合をされるのでは」という不安と、「それでも信じたい」という気持ちが入り混じる、非常に難しい空気感の中でのティップオフでした。
実際、試合の入りは0-8と最悪のスタート。西田優大のカットイン、ジェイク・レイマン&久保田義章の連続3Pでいきなり三河ペース。「あれ、また仙台戦の悪夢再現か?」というざわつきがアリーナを包みました。
ここで中山拓哉がキャッチ&シュートの3Pを沈め、ピンダーも外から決めてなんとかブレーキを踏むことに成功。立て直す力を見せられたかどうかが、この試合で最初にチェックしたいポイントでした。
田口の県民歌、栗原スタメン復帰──前半46点の希望
この試合で象徴的だったのが、田口成浩の県民歌斉唱と、栗原翼のスタメン続投です。ケガでコートには立てない田口が、ブースターと一緒に県民歌を歌い、その後に行われたパドルタイムでもチームを鼓舞。仙台でズタボロになった空気を、なんとか前向きにひっくり返そうとする「見えないエナジー」が会場を包みました。
その流れを、コート上で形にしたのが栗原と中山。
栗原はフェイクからのインサイドパス、カットイン、そしてブザービーター3Pと、プレーメイカー兼スコアラーとして前半から大活躍。中山はオフェンスリバウンドに絡み続け、ディープレンジの3Pまで決めて三河ディフェンスにプレッシャーをかけ続けました。
さらに元田大陽も果敢にカットインからゴールにアタックし、ウェッツェルのフック、ピンダーのゴール下と、オフェンスのバランスも良好。前半だけで46得点、ガードナーにファウルを重ねさせるなど、「仙台戦と同じチーム?」と疑いたくなるほどの内容でした。
前半を46-42とリードで折り返した時点で、ブースターの頭に浮かんだのは「これなら三河相手にも勝負になる」という期待と、「だからこそこの内容を40分続けてくれ」という願いだったはずです。
ゾーンとピンダー退場──後半21点に沈んだオフェンスの現実
しかし、試合の流れは第3Qの途中でガラッと変わります。きっかけは三河のゾーンディフェンスと、ピンダーのファウルトラブルです。
第3Q序盤、ピンダーのアタック、赤穂雷太の3Pで51-44とリードを広げたところまでは完璧な流れ。ところが、チームファウルがかさみ、レフリーへのフラストレーションも蓄積。そこに三河がゾーンを敷いてきたことで、秋田のオフェンスリズムは一気に乱れました。
ボールが止まり、パスが横にしか動かなくなり、決めるべきオープン3Pも落ちる。そうしている間に、ガードナーとレイマンの3Pが火を噴き、じわじわと点差を詰められていきます。そして極めつけが、ピンダーのパーソナル+テクニカルでの退場。ここで完全に三河側に流れが傾きました。
結果として、前半46点に対して後半はわずか21点。仙台戦でも課題となった「ゾーンへの対応」と「メンタルのコントロール」が、またしても痛恨の形で露呈してしまったと言えます。
| 区分 | 秋田ノーザンハピネッツ | シーホース三河 |
|---|---|---|
| 前半合計 | 46点(19+27) | 42点(23+19) |
| 後半合計 | 21点(13+8) | 37点(20+17) |
| 最終スコア | 67点 | 79点 |
数字で見ると、「後半21点」こそがこの試合のすべてと言っても過言ではありません。ディフェンスの強度は仙台戦より明らかに戻ってきただけに、なおさら「もったいない」の一言に尽きるゲームでした。
試合結果・速報
2025-26 B1 12/13(土)第14節 VSシーホース三河GAME1
| チーム | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 秋田ノーザンハピネッツ | 19 | 27 | 13 | 8 | 67 |
| シーホース三河 | 23 | 19 | 20 | 17 | 79 |
1Q:0-8スタートから立て直した中山&ピンダー
試合は三河の8-0ランでスタート。西田のカットイン、レイマン&久保田の3Pでいきなり秋田はタイムアウトを取らざるを得ない展開になります。ピック&ロールの守り方が曖昧で、コーナーを空けてしまう形が続いたのは大きな反省材料です。
それでも、タイムアウト明けに中山がキャッチ&シュートの3Pを沈め、ピンダーも外から決めて6-10。栗原は3Pフェイクからのピンダーへのインサイドパスなど、ゲームメイクとスコアリングを両立。ベンチから入ったメザー、マクリーンも速攻で流れを変え、終盤には中山の3P、栗原&ピンダーのゴール下で三河のゾーンも一度は崩してみせました。
それでもガードナーの3Pやゴリゴリのポストプレーで再び押し込まれ、19-23で最初の10分を終えます。
2Q:ガードナーF3、ブザービーター栗原3Pの「これぞ秋田」タイム
2Qは、今季ベストと言ってもいい内容でした。栗原のドライブ、元田のカットイン、ウェッツェルへのインサイドパスからのフリースロー獲得で反撃開始。ガードナーに早々とF2を積み上げさせると、栗原の3Pでついに25-23と逆転に成功します。
中山のステップバックからのロング2、ピンダーから元田へのキックアウト3Pで34-29と一気に点差を広げたあたりは、「走って守って、シンプルに攻める秋田らしさ」がしっかり出ていました。
途中でメザー・高比良・土屋の3人を同時投入してリズムが少し乱れる場面もありましたが、マクリーンのドライブでガードナーにF3を献上させたのは大きなプレー。三河はホワイトの3Pで食らいつきますが、最後は残り5.1秒から栗原がブザービーター3Pを沈め、46-42と会場を沸かせたままハーフタイムに突入しました。
3Q:ゾーンにハマり、ピンダー退場で一気に逆風
後半立ち上がりも、最初は悪くありませんでした。ピンダーのアタック、赤穂の3Pで51-44とリードを広げ、ガードナーのファウルもかさみ「これはいけるかも」という空気に。
しかし、ここから試合が大きく動きます。三河がディフェンスの強度を一段階上げ、ゾーンを混ぜながら秋田のハーフコートオフェンスを停滞させます。秋田はターンオーバーが目立ち始め、オープン3Pも決めきれない悪循環。その隙を逃さず、ガードナーとレイマンが3Pで一気にたたみかけ、逆転を許してしまいました。
中山はミドルシュートやディープ3Pで懸命に流れを引き戻そうとしましたが、マクリーンのドフリー3Pが落ちた場面など、ここぞでショットが決まらない展開が続きます。そして何より痛かったのが、ピンダーの個人ファウル+テクニカルでのF5退場。レフリーへのフラストレーションも見えたプレーで、ここは本人も含めてチーム全体で深く反省したいところです。
このピンチの時間帯にフリースローを確実に決められ、59-62と逆転されて第4Qへ。
4Q:サイズとメンタルの差を見せつけられた終盤
ピンダー不在の4Q、秋田はどうしても攻撃の迫力を欠きました。三河はガードナーの3Pで二桁差に乗せると、ケネディやホワイトらが要所で外角を決め、完全に自分たちのリズムへ。秋田はチームファウルもかさみ、ディフェンスで止めてもその後のリバウンドを拾えない場面が増えていきます。
ウェッツェルのドライブや、元田の激しいディフェンスでケネディにダブルドリブルを誘うなど、秋田らしいプレーも随所にありましたが、時すでに遅し。中山は18得点と気を吐いたものの、終盤に「流れを一変させる一撃」を打ち込むことはできず、67-79でタイムアップとなりました。
ブースター目線で言えば、「2Qまでで46点取っているのに、最終67点って何をどうしたらこうなるの?」というモヤモヤが残る試合。それでも仙台戦とは違い、少なくとも前半25分間は「秋田らしいチームバスケット」を見せてくれたことは、次につながるポイントだと信じたいところです。
ハイライト動画
試合の流れを一気に振り返りたい方は、ハイライト動画を見るのが一番早いです。
2Qのブザービーター栗原3Pや、中山のディープ3、ピンダーのアタックなど、この試合の「ピーク」がギュッと詰まっています。
ケンゾーHCコメント
前田顕蔵HCは試合後の会見で、前半の内容を一定評価しながらも、「第3Qのゾーンへの対応と、ピンダー退場はやってはいけないこと」と厳しく指摘していました。ディフェンスから走る時間帯は「25分くらいはできていた」としつつも、そこで勝ち切れないからこそ今の順位にいるのだというニュアンスも伝わってきます。
また、仙台戦からの切り替えについては選手を称え、「やることをやれば戦えるチームであることは全員理解している」と前向きな言葉も。要するに、やるべきことがブレているわけではなく、40分間貫き通せない「弱さ」と今は戦っているというメッセージでした。
会見のフル映像はこちらから視聴できます。
選手コメント
この日のヒーローインタビューに一番近かったのは、やはり復帰後も存在感を放つ栗原翼。試合後のコメントでは、「前半はディフェンスから走って、全てで先手を取れていた」と手応えを語る一方で、第3Q以降のゾーンに対して自分たちのオフェンスが機能しなくなり、ターンオーバーで突き放されたことを素直に反省していました。
自身の役割については「ボールを早く動かして、オフェンスの展開スピードを上げること」と明言。そのうえで、復帰後の手応えとともに「まだまだ修正すべき点は多い」と、ベテランらしい冷静な視点も見せています。
動画では、プレーひとつひとつを振り返りながら、チームがどう変わっていくべきかも語っているので、ぜひチェックしてみてください。
一方のシーホース三河側からも、メディアやSNS上で「秋田の前半のディフェンスはタフだった」といった声が多く見られました。ガードナーやケネディ、西田らにとっても決して楽なゲームではなく、その中で後半のゾーンと外角シュートで試合をひっくり返したことが、今の三河の地力の高さを物語っています。
最後に──「25分の秋田」と「15分の秋田」、どちらを信じるか
この三河戦GAME1をどう捉えるかは、ブースターによって大きく分かれると思います。
「またゾーン崩せないのか」「ピンダーはいい加減感情コントロールしてくれ」と怒りたくなる気持ちも、正直めちゃくちゃわかります。2Qまでに46点を取っておきながら、試合終了で67点。数字だけ見れば「自滅」と言われても仕方ありません。
ただ一方で、仙台戦とは明らかに違う「25分間の秋田」が存在したのも事実です。
・田口の県民歌とともに、高いエナジーで入れたこと。
・栗原がボールムーブとスコアリングの両方でチームを引っ張ったこと。
・中山が18得点、オフェンスリバウンドやスチールでも流れを呼び込んだこと。
・元田がディフェンスでケネディからダブルドリブルを誘うなど、3年目らしい成長を見せたこと。
これらは、決してマイナス評価だけで片づけていい試合ではないと感じさせてくれます。
課題は明確です。
・ゾーンディフェンスへの「共通理解」と「約束事」の徹底。
・フラストレーションを笛や相手ではなく、自分たちのエナジーに変えるメンタルコントロール。
・リードしている時間帯にこそ、リスクと我慢のバランスを取れるゲームマネジメント。
このあたりを乗り越えない限り、順位表の下から抜け出すのは難しいでしょう。
それでも、ブースターとしては「25分間の秋田」を40分に伸ばしてくれる未来を信じたいところ。三河とのGAME2、そしてその先の東地区の戦いに向けて、今日見えた「希望」と「課題」がどうアップデートされていくのか、しっかりと見届けていきましょう。
今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。引き続き、roukyuu.comでは秋田ノーザンハピネッツの「現場視点」「ブースター目線」の記事をガンガン更新していきます。

