第107回全国高校野球選手権、夏の甲子園。8月6日の1回戦は沖縄尚学1-0金足農。スコアだけを見ると悔しさが先に立ちますが、内容は「守りの金農」を体現した胸を張れる一戦でした。6回まで相手をノーヒットに抑え、試合時間はわずか1時間40分。最後はワンチャンスをものにされましたが、金農らしい粘りと組織力は確かに甲子園に刻まれました。

ハイライト&動画で振り返る:息詰まる投手戦の全貌

先制は7回裏。沖縄尚学は一死から3番・比嘉大登の中前打、二死から主将・眞喜志拓斗の左前打で一、三塁。そこで6番・阿波根裕の決勝タイムリーが左前へ――これが決勝点になりました。投げては、沖縄尚学の2年生左腕・末吉良丞が9回3安打14奪三振、無四死球の完封。金農は8回に同点機をつくるも、一歩届かず。まずはダイジェストで試合の流れをチェックしておきましょうか、、。

金農の継投は勝ちパターンだった:斎藤→佐藤凌玖→吉田

悔しいのは事実。でも、金農の準備と運用は高く評価できます。先発は2年生左腕の斎藤遼夢。落ち着いたマウンドさばきで4回無安打の快投。5回からは3年生左腕の佐藤凌玖にスイッチし、バックのミス絡みで二死三塁のピンチを招いたところで、エース・吉田大輝を投入――ここで初球143キロの内角直球で二ゴロ、ピンチを一球で断ち切ります。
実はこの「継投」は事前のプラン。「1点もやりたくなかったので、エースに託した」と中泉一豊監督。六回まで3投手で無安打に封じて終盤勝負へ。采配も投手陣も、やるべきことはやっていましたよね。

問題提起:なぜ“あと1本”が出なかったのか

打線は相手エース・末吉の140キロ台の直球とキレのあるスライダーに計14三振。球威だけでなく「見せ球」と出し入れ、ゾーンの出入りが巧みで、狙い球を絞らせてもらえませんでした。攻略の糸口は、7回表に3番・薮田龍人が放った左前打のように、カウントを作って甘い球を一発で仕留めること。次を見据えるなら、①初球からの「打ちにいく球」明確化、②高め直球と縦スライダーの見極めノートの作成、③走者一塁での逆方向徹底とバント以外の小技(エンドラン/ナゴヤ打ち)をもう一枚――この3点が現実的です。実際に終盤の勝負どころは「単打×走塁×単打×単打」で決まった試合。金農も終盤の一点術をさらに磨けば、こうした投手戦をものにできるはず。

吉田投手の出来が悪かったとはいえ、沖縄は甘い球を見逃さず、1球で仕留めている。この勝負強さは大したものだ。金足農はまずこのような凄い投手との経験がないのは致命的。試合まで短く対策がよくできなかったのは、無念だったろうか。時々同じ高校生でも、こうした試合を経験するのは仕方ないし、あきらめないでバントで揺さぶるとかしてほしかった。

選手と監督の声(金足農)

吉田大輝(3年):右太ももの違和感で先発回避もしっかりゲームに入り、六回には自己最速147キロを計測。「申し訳ない…」と涙のコメントを残しつつ、「いずれ兄と同じ舞台で」と前を向きました。勝敗を分けたのは7回の一球(変化球の浮き)。それでも1失点でゲームを作った事実は重い。/p>

斎藤遼夢(2年):代役先発で4回無安打。「野球はやっぱり楽しい」と凛とした表情。来季“背番号1”の有力候補として、今大会で得た経験は大きい。

中泉一豊監督:「1点もあげたくなく、吉田に託した」。継投策は機能しただけに、なお悔しい。試合後には「打線の底上げが必要」と課題も明確に示しました。

まとめ:金足農の夏は終わらない――“あと一歩”を、次は越える

0-1という最小失点での敗戦は、投手・守備の土台が全国でも通用することの証明です。
一方で勝敗を分けたのは、終盤のワンチャンスを「点」に変える打の再現性。配球設計の共有(球種・高さの想定)初球からの割り切り、そして走塁の仕掛け。この3つを秋以降で磨けば、金農はまた強くなる。
2018年の「金農旋風」をアルプスで見ていた少年が、いま甲子園のマウンドで前を向いています。涙は未来へのガソリン。物語はまだ途中です。来季、もっと強い金足農で聖地へ――。


参考・ハイライト
・「金足農―沖縄尚学」試合ページ/ダイジェスト動画(スポーツナビ)
・「(金足農 – 沖縄尚学)ハイライト動画」(バーチャル高校野球)
・各種ショート動画(ABCテレビ/スポーツナビ動画)
・試合詳細・コメント(朝日新聞、毎日新聞、沖縄タイムス、日刊スポーツ ほか)

出典:スコア・決勝打・投球内容、動画および戦評(スポーツナビ/ABC動画、沖縄タイムス)/継投経緯とコメント(朝日新聞、毎日新聞)/選手コメント(スポーツブル/日刊スポーツ)など。