ホームCNAアリーナ☆あきたに3,509人。ピンク一色のスタンドが作る最高の舞台で、秋田ノーザンハピネッツは東地区5位の群馬クレインサンダーズと激突しました。
しかしスコアボードに刻まれたのは、48–81という完敗スコア。タナー・ライスナーは脳震盪で欠場、キャプテン田口成浩も長期離脱中。栗原翼、赤穂雷太もプレータイムがなく、実質9人ローテでの戦いは、前半でほぼ勝負ありという厳しい内容になりました。
それでも、ヤニー・ウェッツェルの23得点13リバウンドのダブルダブル、土屋アリスター時生の豪快ダンク、新加入組の相原アレクサンダー学の躍動など、光がなかったわけではありません。問題はその「光」をチームとしてどう広げるか。ファン目線で、今日は少し辛口も交えつつ振り返っていきます。
今日の試合の注目点
このGAME1を振り返るうえでのキーワードは、「9人ローテ」と「ターンオーバー由来の失点」、そして「メンタルの入り方」です。
- ライスナー&田口のダブル離脱により、インサイドと日本人スコアラーの両方を欠いた状態でのゲーム。
- 栗原・赤穂はロスター入りも出場なし。実質9人で40分を回すタフなローテーション。
- 前田顕蔵HCが会見で「試合の入りが非常に悪かった」「前半だけでターンオーバーから22失点」と語ったように、立ち上がりとボールケアが大きな差に。
- それでもウェッツェルが23得点13リバウンド、ピンダーも7得点6リバウンドとインサイドは一定の存在感。周りがどこまで追随できるかが今後のテーマに。
- 群馬側では、テレンス・ウッドベリー18得点、ケリー・ブラックシアー・ジュニアが14得点14リバウンドのダブルダブル。さらに辻直人がB1通算3P1000本達成という節目のゲームでもありました。
つまり今日は、「メンバー的にはしんどいのは分かっている、その中でどれだけ粘れるか」を試される試合でしたが、残念ながら前半でその勝負に負けてしまった、という印象です。
試合結果・速報
2025-26B1第9節11月8日 秋田ノーザンハピネッツ VS 群馬クレインサンダーズ GAME1
| チーム | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 秋田ノーザンハピネッツ | 12 | 11 | 14 | 11 | 48 |
| 群馬クレインサンダーズ | 23 | 26 | 20 | 12 | 81 |
スタッツだけ見れば「完敗」の一言ですが、どこで勝負が割れたのかを、クォーターごとに追っていきます。
1Q:開始90秒でファウル3つ、8–0ランを食らう最悪のスタート
試合は群馬・藤井祐眞の3Pでスタート。ここから秋田はディフェンスで後手に回り、開始早々に軽いファウルを重ねてしまいます。わずか90秒でチームファウル3つという数字が、この日の「入り」を象徴していました。
元群馬で古巣対決となった菅原暉は、気合が空回りしたか立ち上がりで2ファウル。リズムに乗る前にベンチへ下がらざるを得ず、ハンドラー不在の時間帯が生まれます。その隙を逃さず、群馬に8–0のランを許し主導権を完全に渡してしまいます。
オフェンスではアリ・メザーの積極的なドライブ、キアヌ・ピンダーの3Pで追いすがる場面もありましたが、ディフェンスのローテーションミスから細川一輝にフリーで3Pを決められるなど、「守れていないから流れが来ない」悪循環。12–23と、早くも二桁ビハインドで第1Qを終えます。
2Q:新加入ウッドベリー&ブラックシアーに翻弄、土屋のダンクが唯一の救い
第2Qも流れは群馬。新加入のテレンス・ウッドベリーがいきなり高確率の3Pとミドルを連発し、秋田ディフェンスをズタズタに。ブラックシアーもミスマッチを突きながらインサイドで着実に加点し、群馬は外も内も止まらない状況になります。
秋田は相原アレクサンダー学がフリーの3Pを沈めるなど、ポイントポイントでは良いプレーも見せます。ただ、高比良寛治がいきなり3ファウルとなるなど、日本人ウイング陣のファウルトラブルは深刻。ローテーションがさらに苦しくなり、前田HCとしても守り方のオプションを削られていきます。
そんな中、会場を一瞬沸騰させたのが中山拓哉のスティールからの速攻。走っていた土屋アリスター時生へパスが通り、豪快なダンクが炸裂。CNAアリーナがこの日一番の歓声に包まれました。しかし、その直後も群馬のアウトサイドは落ちず、前半終了時点で23–49。数字以上に内容の差を感じる前半となりました。
3Q:ウェッツェルの孤軍奮闘、しかし11–0ランを止められず
後半、反撃の狼煙を上げたのはエースセンターのウェッツェル。スピンムーブからのドライブでバスケットカウントを奪うと、3Pも沈め、一人でオフェンスを支えます。最終的に23得点13リバウンド、FG7/9、FT6/6という圧巻のスタッツは、内容がどれだけ苦しくても彼だけは仕事をしていたことの証明です。
中山のスティールからピンダーがゴール下を決め、菅原の3Pも飛び出し、一瞬だけ「行けるか?」という空気が漂います。ところがその後オフェンスが停滞。パスは回るものの、最後のフィニッシュがタフショットになり、群馬に11–0のランを許してしまいます。
群馬はブラックシアーの内外からの得点に加え、中村拓人のペネトレイト、ジョーンズの3Pと、誰が出てきても攻撃の形を崩さないのが見事。秋田のディフェンスは、一度ズレが生まれると修正しきれず、そのまま得点まで持っていかれるシーンが目立ちました。
4Q:相原×ウェッツェルの光、意地のプレッシャーも時すでに遅し
第4Q、ようやく秋田らしい「泥臭さ」が少し戻ってきます。相原とウェッツェルの合わせからインサイドでエンドワン、相原のスティールから再びウェッツェルがゴール下を決めて42–69。「守って走る秋田」の片鱗が見えた時間帯でした。
ただし土屋は良いポジション取りでゴール下まで侵入するものの、最後のフィニッシュ精度に課題が残りました。群馬はジョーンズとブラックシアーのポストプレーで落ち着いて加点。ピンダーのポジションミスも見逃さず得点に結びつけられてしまいます。
終盤、中山のドライブから前線プレッシャーを仕掛けて8秒バイオレーションを奪取。その流れから中山自身が3Pを沈め、「意地」は見せましたが、時すでに遅し。48–81、点差以上に内容の差があったゲームとなりました。
秋田ノーザンハピネッツ 個人スタッツ&寸評
ここからは、秋田側の主な個人スタッツをピックアップしつつ、ブースター目線で短評を添えていきます。データは公式スタッツからのものです。
- ヤニー・ウェッツェル:23得点13リバウンド(FG7/9、3P1/2、FT6/6)
完全に「別格」。ポストアップからのフィニッシュ、P&R後のロール、さらには3Pまで決めてきました。これだけインサイドでアドバンテージを作っているのに、チームとして活かし切れなかったのはもったいないの一言。次戦は、もっと早い時間帯からウェッツェル起点のオフェンスを増やしたいところ。 - キアヌ・ピンダー:7得点6リバウンド(FG2/5、3P1/3)
数字だけ見るとまずまずですが、ポジションミスから失点を許す場面もあり、評価は五分五分。「サイズがある=守れている」ではないということを、本人もチームも改めて整理したいところです。 - 元田大陽:5得点(FG2/5、3P0/3)
シュートタッチは悪くなく、ディフェンスでも頑張っていましたが、アウトサイドが決まり切らない分だけ相手のプレッシャーが強くなりました。思い切りの良さはあるので、入る・入らないに一喜一憂せず、打ち続けてほしい選手。 - 菅原暉:3得点(出場12:42)
古巣対決ということで期待値も高かっただけに、立ち上がりの2ファウルでリズムを崩したのが痛恨。オフェンスでの主導権争いに絡めなかったのは反省点ですが、逆に明日のGAME2は「やり返す」絶好のチャンスです。 - 中山拓哉:3得点、スティール2、アシスト2
シュートタッチは0/5と厳しい数字も、スティールから流れを引き寄せるプレーや終盤の3Pなど、キャプテンらしい意地は見せました。内容に本人が一番納得していないはずなので、コメント通り「こんな試合は二度としない」つもりでチームを引っ張ってほしいところ。 - 相原アレクサンダー学:3得点、スティール1
合流して間もない中でも、ディフェンスの強度と3Pのタッチはしっかり見せました。ファウルがかさみがちなチーム状況の中で、いかにクリーンに激しく守れるかが今後のポイント。 - 土屋アリスター時生:2得点(ダンク1本)
ダンクで会場を沸かせた一方、決め切りたいゴール下を落とす場面も。フィニッシュの質をもう一段階上げられれば、一気にローテーションのキープレーヤーになれるポテンシャルを感じます。
群馬クレインサンダーズ 注目選手&ターニングポイント
今日は相手を褒めざるを得ないゲームでもありました。群馬の完成度の高さがそのままスコアに出た形です。
- テレンス・ウッドベリー:18得点(3P2本)
新加入とは思えないフィット感。オフボールでもスペーシングをしっかり取り、秋田ディフェンスを常に広げていました。 - ケリー・ブラックシアー・ジュニア:14得点14リバウンドのダブルダブル
ミスマッチを逃さずポストプレー、3Pも決めつつFTも高確率。インサイドの「王様」として堂々たる働きでした。 - 藤井祐眞:13得点(3P3/8)
立ち上がりの3Pで一気に流れを掴み、その後もゲームコントロール役として安定。秋田としては、彼に好きなように3Pを打たせてしまったのは反省点です。 - 辻直人:7得点(3P2本)+B1通算3P1000本達成
第2Q終盤、右コーナーからの4点プレーとなった3PがB1通算1000本目。歴史的な節目のシュートを、秋田相手に決められてしまったのは悔しいですが、それだけ彼のキャリアが積み重ねてきたものの大きさでもあります。
ハイライト動画
文章だけでは伝わらない部分は、ハイライト動画でぜひチェックしてみてください。
秋田ブースターとしては正直つらい映像も多いですが、「何ができていて、何が全然足りていないのか」を確認するうえで、もう一度見返す価値は十分にあります。
ケンゾーHCコメント:基本の部分で負けていては戦術まで行けない
前田顕蔵HCは会見で、まず「試合の入りが非常に悪かった」と率直に自己評価。そのうえで、ディフェンスでは手が先に出て簡単にファウルを取られてしまい、足で守れていないこと、オフェンスではプレッシャーをかけられると前半だけでターンオーバーから22失点を喫したことを厳しく指摘しました。
また、怪我人が多い状況についても「だからこそ、出ている選手にはチャンスだと思って思い切ってプレーしてほしい」とコメント。受け身になってしまうメンタルを問題視し、「積極的なミスなら良いが、今日のような受け身のミスでは勝負にならない」と、選手と自分自身の双方に矢印を向けていました。
明日のGAME2に向けては、「ディフェンスの強度を上げ、チームとして良いシュートを打てる形をもう一度作り直したい」と前向きな言葉も。ここからの修正力が、今季の秋田を占う大きなポイントになりそうです。
ケンゾーHCのコメント動画はこちら:
選手コメント:中山拓哉が語った「こんな試合は二度としてはいけない」
中山拓哉は試合後、「試合の入りで相手に流れを持っていかれ、前半だけでターンオーバーから28点もやられては勝てない」という趣旨のコメントを残しています。「人がいなくても、いる選手がやらなければいけない」という言葉には、キャプテンとしての責任感と悔しさがにじんでいました。
さらに、「お金と時間を使って見に来てくれる方々に、何を見せられるのかが大切」「こんな試合はしたくないし、してはいけない」という強いメッセージも。今日の内容を受けて、明日どんな姿を見せてくれるのか、ブースターとしては信じて待つしかありません。
中山選手のコメント動画はこちら:
一方、相手の辻直人はB1通算3P1000本という大記録を達成。前節のインタビューでは「ここからさらに本数を伸ばしていきたい」と語っており、今日の節目のゲームでもきっちり結果を出してきました。秋田としては、「記録達成の相手」になってしまった悔しさを、明日のGAME2で返したいところです。
最後に:ケガ人を言い訳にせず、「今いる9人」でどう戦うか
ライスナーの脳震盪、田口の長期離脱と、チーム状況が苦しいのは誰の目にも明らかです。それでも、「ケガ人がいるから負けても仕方ない」では、プロチームとして終わりだと個人的には思っています。
今日のGAME1は、正直言って「完敗」。ただし、その中にも次につながる材料はありました。
- ウェッツェルを中心にしたインサイドアドバンテージは、群馬相手でも十分通用する。
- 相原・元田・土屋といった日本人選手が、もっとアグレッシブにプレーすれば得点源は増やせる。
- ディフェンスは「強度」と「ポジショニング」の再確認で、まだまだ改善余地がある。
- 中山キャプテンの危機感は本物。あとはそれをチーム全員で共有できるかどうか。
明日のGAME2では、
- 第1Qから足を動かしたディフェンスで、簡単に3Pを打たせない。
- ターンオーバーを激減させ、相手の速攻・ボーナスポイントを削る。
- ウェッツェル&ピンダーを起点に、キックアウトの3Pを決め切る。
- 「積極的なミス」はOK、「受け身のミス」はNG、という基準を全員が共有する。
このあたりができれば、同じ相手でも全く違うゲームになるはずです。秋田ブースターとしては、今日の悔しさをしっかり飲み込みつつ、明日もアリーナで、あるいは配信の前で全力応援していきましょう。
そして、出場時間を与えられている選手たちへ。今日は辛口になりますが、「ケガ人がいるから自分が出ている」のではなく、「自分が出るに値するプレーをしているからコートに立っている」と胸を張れるような試合を、明日こそ見せてほしい。そんな期待を込めて、このGAME1の振り返りを締めたいと思います。
