クリスマスイヴ。勝ちたい。いや、勝たなきゃいけない。そんな気持ちで画面(現地)を見ていたブースターは多かったはずです。
相手は今季のレバンガ北海道。富永啓生の得点力、オカフォーのサイズと巧さ、さらにジョーンズらベテラン勢の落ち着き。攻撃力の「厚み」がリーグでも上位クラスのチームです。
一方の秋田は、茨城戦の悔しい連敗から中2日。赤穂不在のやりくりも続く中で、「クリスマスイヴの奇跡はあるのか?」――答えは、奇跡までは届かなかった。でも、ただの完敗でもなかった。今日の79-90には、叱咤激励すべき課題と、拾い上げたい“光”が両方ありました。
今日の試合の注目点
今日のポイントはシンプルに3つ。ここを押さえると、この試合が“なぜこうなったか”が一気に見えてきます。
- ①「入りの守備」=トランジションで走られないこと
- ②富永啓生の3Pを止めた“後”のケア(ミドル・カット・インサイド)
- ③オカフォー対策の代償(ローテの遅れ→リバウンド→失点)
秋田は本来、ロースコアに持ち込んで勝ち筋を作るチームです。つまり、ハイスコアゲームは“相手の土俵”。だからこそ、序盤から足を動かし、1本目のレイアップを簡単に許さないことが大前提でした。
試合結果・速報
2025-26 B1 12/24(水)第16節 VSレバンガ北海道
| 会場 | 北海きたえーる | 観客数 | 5,541人 |
|---|
| チーム | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | FINAL |
|---|---|---|---|---|---|
| 秋田 | 25 | 14 | 17 | 23 | 79 |
| 北海道 | 32 | 20 | 19 | 19 | 90 |
スターティングファイブ(秋田):#1マクリーン/#2栗原/#10ウェッツェル/#12元田/#17中山
結論:最大の敗因は「1Qで32失点」。ここが重すぎました。追い上げの芽は何度も出たのに、追いつくための“坂”が最初から急勾配になってしまった。
1Q(25-32)元田のハッスルで点火…でも“走られて”一気に苦しくなる
立ち上がり、元田のドライブからエンドワン。さらに富永に早いファウル(2つ目)を付ける場面もあり、気持ちは見えました。ラモスのアタック、栗原の3Pと打ち合いながら、ウェッツェルのフック、ピンダーの3Pで一時は18-17。ここまでは悪くない。
ただ、問題はその後。秋田が「DFからリズムを作りたい」と思う瞬間に、北海道はハーラーのゴール下、ラモスのドライブでペイントを割ってくる。オカフォーもアタックでエンドワン。気付けば21-32まで走られ、序盤の主導権を握られました。
2Q(14-20)Wチームは効いた…でも“外と走り”で上回られる
オカフォーにはWチームを仕掛け、パスミスを引き出すなど狙いは見えました。ウェッツェルのフックも連続で決まり29-32。富永のバックカットにやられた直後、元田が切り返して取り返す流れもあり、踏ん張りどころは作れていたんです。
しかし、北海道はケビン・ジョーンズの3P、関野の3P、ジョーンズのミドルと「点の取り方」が多彩。富永も3Pが封じられている間にインサイドや合わせで得点を重ね、結果は37-51で後半へ。秋田が苦しいのは、守っているつもりでも“最後に決められる”こと。ディフェンスの1歩、ローテの半歩がそのまま失点に繋がりました。
ここで一言。ハイスコアゲームは秋田の試合じゃない。この展開になった時点で、勝ち筋はかなり細くなる。だからこそ、後半は「守って走る」以外に道はありませんでした。
3Q(17-19)点の取り合いに付き合い、差が縮まらない…ターンオーバーが痛い
富永のミドル、島谷の高速ドライブで39-56。マクリーンも自分で持ち込み41-56。ここからまた点の取り合いに。秋田のボールが動かなくなったところで、北海道は関野の3P、メザーのフローターで49-66。ピンダーのスティールから元田→ピンダーと繋いで51-66、中山の3Pで追いかけても、すぐに返される。
そしてじわじわ効いてくるのがターンオーバー。追い上げる側は、1本のミスが“相手の2点”に直結します。最後にピンダーのブロックで踏みとどまったのは良かった。でも、点差は大きくは縮まらないまま最終Qへ。
4Q(23-19)髙比良が会場を揺らす3P連発!…でも届かなかった
第4Q、髙比良が4本の3P。これで67-79、北海道のゾーンも打ち破る時間帯が生まれ、ようやく“秋田のリズム”が見えました。残り5分、オカフォーのゴール下を守って、ピンダーが決めて71-79の8点差。ここは本当にあと一歩でした。
ただ、北海道はミスマッチを見つけるのが上手い。ジョーンズへのハイローパス、富永→オカフォーのダンク。秋田もピンダーのドライブで返すが、ジョーンズの3Pでまた突き放される。元田が足をひねって不在のやりくりも響き、最終的に79-90で試合終了。
数字で見る“良かったところ”と“苦しかったところ”
まずは主要選手をざっくり整理。秋田は個の爆発というより「複数人が二桁」で耐えました。北海道は“厚み”が違った。
| 秋田(主な活躍) | スタッツ | 北海道(主な活躍) | スタッツ |
|---|---|---|---|
| ヤニー・ウェッツェル | 16得点 / 11リバウンド / 5アシスト | ケビン・ジョーンズ | 19得点 / 12リバウンド |
| キアヌ・ピンダー | 16得点 / 8リバウンド | ジャリル・オカフォー | 14得点 / 9リバウンド / 7アシスト |
| 元田 大陽 | 13得点(3P 2/4) | 富永 啓生 | 18得点(FG高確率) |
| 髙比良 寛治 | 12得点(3P 4/8) | (複数人) | 外・中・走りで分散得点 |
秋田側の収穫は、髙比良の連続3Pが“武器として成立した”こと。そして、ウェッツェルがゾーンをフックで割れる場面があったこと。ピンダーもスティールやブロックでエナジーを出し続けました。
一方で課題は明確。前田顕蔵HCも会見で繰り返した通り、トランジション、ターンオーバー、リバウンド。この3つが噛み合わないと、秋田のバスケは“勝ち”に繋がりません。
叱咤激励:勝てない時ほど「守りの約束」を雑にしない
ここはあえて辛口でいきます。秋田は今、勝ちが遠い。だからこそ、1ポゼッションの価値が重い。
- 走られたらアウト:特に1Qの“簡単なレイアップ”は致命傷
- ボールが止まったら負け:3Qで「動かない時間」が増えるほど相手が楽になる
- ローテの結果のリバウンドまでが守備:取れないと“守った意味”が消える
ただね、ブースターとして言いたいのはここ。負けたけど、戦う姿勢は最後まで消えなかった。髙比良の3P連発、ピンダーのアタック、ウェッツェルの粘り。あの時間帯に“観てる側の心”を動かしたのは本物です。
ハイライト動画
ケンゾーHCコメント
前田顕蔵HC(ケンゾー)は試合後、「オフェンスは良いことが多かったが、入りで簡単に走られた」と振り返りました。特にトランジション、ターンオーバー、リバウンドを今後の大きな課題として挙げています。
選手コメント
秋田は髙比良が“入りの重要さ”と“守らないと勝機がない”ことを強調。第4Qの連続3Pについても、決めたことより「大事な場面で決め切れなかった悔しさ」を口にし、次戦ホームでの勝利を誓いました。
髙比良寛治「入りの重要さを痛感しました。ディフェンスをしない限り勝機は見えてきません」
北海道側はトーステン・ロイブルHCが「相手の3P成功率が高い中でも、ポゼッションを多く奪って勝った」とゲームの肝を説明。富永は個人として序盤のファウルトラブルを反省しつつ、ドライブや合わせで立て直した手応えを語っています。
ロイブルHC「相手より多くポゼッションを奪って勝利できたことを誇りに思います」
富永啓生「序盤でファウルが続いて悪い入りでしたが、立て直して得点に繋げられました」
次戦へ:年内ラストホームで“勝ち筋”を取り戻そう
次はホームでファイティングイーグルス名古屋戦(年内最終節)。ここで必要なのは、根性論じゃなくて、再現性のある改善です。ブースター目線で、今日の試合から持ち帰りたい処方箋はこれ。
- ①1Qの守備だけは死守:失点を減らす最短ルートは「最初の5分」
- ②トランジションの約束を徹底:戻る・止める・守る、全員で同じ絵を見る
- ③攻めで止まらない:ウェッツェルの起点、ピンダーのアタック、髙比良の外――全部を繋ぐ
今日だって、4Qに“秋田の空気”は作れた。つまり、できるんです。あとは最初からそれを出すだけ。相手の強み(走り・厚み・サイズ)に飲まれる前に、秋田の強み(粘り・我慢・泥臭さ)を先に叩き込む。これが勝ち筋です。
最後に
79-90。負けは負け。悔しい。でも、髙比良の3Pが火をつけ、ピンダーが身体を張り、ウェッツェルがゴール下で踏ん張った。茨城戦の反省を抱えたままでも、戦う姿勢を“少しは”見せた試合でもありました。
だからこそ、次は結果がほしい。年内ラストホーム、ここで1つ勝てば空気は変わる。負けが込んでいる今こそ、バラバラにならず、守備の約束を揃えて、秋田のバスケを取り戻そう。ブースターは、苦しい時ほど見てる。ここからだ。
