劇的勝利の翌日なのに、今日の秋田は最初の数分で自分から勝ち筋を捨てた。出だしの強度不足と、要のビッグの早いF2——この二つで試合の根が折れた。前半だけで36-58。滋賀の「走力×縦圧」に面の皮を剥がされ、89-73で完敗。ここでは“超・辛口”で斬る。ただし、ブースター目線で次につながる「いいとこどり」も、冷静に拾いきる。結果だけで終わらせない、次戦で効く実装案まで持ち帰ろう。
今日の試合の注目点
- 開始直後の低温スタートで主導権を献上。ビッグ(ウェッツェル)の早いF2で全プランが瓦解。
- 田口の負傷退場でコーナー重力が消滅。スペーシング再設計が間に合わず、オフェンスが平板化。
- 滋賀の大型ビッグ(オーガスト)が内外で支配。PA(ペイント)と外角の波状に、受け身のローテで後手。
- それでも4Qは守備の圧を回復。ピンダーの3P→スティール、ウェッツェルのダンク、中山の継続アタックで“回収の芽”。
- 「戦う集団」への原点回帰に必要な即効処方箋(5項目)は明確(後述)。
試合結果・速報
2025-26B1第7節11月2日 秋田ノーザンハピネッツ VS 滋賀レイクス(GAME2)
| Q | 秋田 | 滋賀 |
|---|---|---|
| 1Q | 17 | 28 |
| 2Q | 19 | 30 |
| 3Q | 18 | 19 |
| 4Q | 19 | 12 |
| TOTAL | 73 | 89 |
会場:滋賀ダイハツアリーナ/TIP-OFF 14:05/秋田スターティング5:#10 ヤニー・ウェッツェル、#12 元田大陽、#15 タナー・ライスナー、#17 中山拓哉、#22 アリ・メザー
ゲームの流れ
1Q|17-28 —— 出だしの「温度ゼロ」で主導権を献上
開始直後、要のウェッツェルが早々にF2(個人2つ目の反則)。これで秋田の全プランが軋む。中山のインサイドドライブ、西田のトレーラー3で一度は7-8まで迫るが、そこからが続かない。滋賀はボールマンへの1stタッチから物理強度で上回り、トランジションの1stウェーブを何度も作ってくる。秋田は戻りの1歩目が遅く、ナイル(nail)に人が立てないためPA(ペイント)までの道が常に開通。田口のコーナー3で“空気”は変わりかけたが、最初の数ポゼッションで温度を置けなかった代償は重く、そのまま17-28。
- 中山→強気の縦:ハーフコートでも最初に体をぶつけに行く姿勢は○
- 西田→早いトレーラー3:流れを引き戻す一手になりかけたが、次の一撃が出ない
- 秋田→セーフティの戻りが遅く、2ndウェーブの止血ができず
2Q|19-30 —— 田口離脱で「外の重力」がゼロに。形を変えない鈍さ
ウェッツェル不在帯を狙って、滋賀はオーガストのゴール下→ドライブ→外角を波状投入。そこで田口が負傷退場。コーナーの重力が消え、ヘルプの距離が一気に詰まる。秋田は元田の縦、メザーのショートレンジで火種を作るが、ウィークサイドの“見せ札”がないため、相手のスタントが止まらない。常田のノーマーク3は惜しくも外れ、直後に相手の連続3P被弾。36-58(22点差)で前半終了。ここで一度、連続ピン→フレア→リフトのセットを早出しして相手の足を止める判断がほしかった。
- 元田→初速の縦でペイントタッチを量産。継続して使いたい“突破口”
- メザー→良いプローブもあるが、壁に突っ込む悪癖が断続的に顔を出す
- 秋田→田口不在=重力喪失の瞬間、スペーシング再設計(角度変更)が遅い
3Q|18-19 —— 守備の圧は戻った。でも“簡単”を落としている限り追いつけない
ハーフコートの最初の一歩目が前へ。合わせの2メンで良質なショットを連続で生むが、赤穂のオープン3が短く、土屋のゴール下は決め切れず。決めるべき“簡単”が落ちると、相手に重心を戻される。滋賀はタフショットを1本ねじ込み、こちらはナイスアクションからの外れで“手応えがスコアに化けない”時間が続く。交代や2-3を1〜2回だけ混ぜる“景色替え”があれば、相手のリズムを一度切れた局面。
- 秋田→ディナイとローメンの位置が改善。ボール圧は前半より明確に上昇
- 赤穂→ノーマークは打ち切る決断を。迷いの0.5秒がTOと同義になる
- 滋賀→こちらの“惜しい”直後に必ず1本返す。試合巧者の時間帯
4Q|19-12 —— スイッチは入った。ピンダーの連鎖とウェッツェルのダンクで沸騰、ただし時計は残酷
中山が先にボールへ。圧がかかったところでピンダーの3Pが刺さり、直後にスティール。走り切ってウェッツェルのダンクが決まり、ベンチが大きく跳ねる。菅原のトレーラー3、元田のミドル、ライスナーの接触押し込みで“秋田がやりたい回収の形”を連発。クリーナーへの圧で秋田ボールを取り返す場面も増えた。ただ滋賀はスターターを戻し、余計なメンバー変更をせずゲームコントロール。こちらのランの尻尾をすぐ切られ、17点差までの回収でタイムアップ。
- ピンダー→3P→スティール→ダンクの連鎖は完全に“起爆”。1本目の3Pをどう用意するかが鍵
- ウェッツェル→復帰後のユーロ&ダンクで入口をこじ開ける。最初のファウルの質だけは絶対に変えたい
- チーム→“回収の芽”は確実にある。次は最初の3ポゼッションから置くこと
“超・辛口”の本丸:いつまで同じ穴に落ちるのか
① 最初の3ポゼッションを「儀式化」していない——抽象論の“強度”はもう要らない
出だしの数ポゼッションは、試合の温度を決める儀式。ここを毎回“即興”で入るから、相手に温度を決められる。攻撃はHorns→逆サイド開放/Iverson→45°リフト3/Spain PnRの早出しの3連を固定。守備は最初のP&RをICE固定、ナイル(nail)に1枚置いてPAタッチを0〜1回に制限。考えずに出せる「型」を用意し、迷いを消せ。
② ファウルの“質”にこだわれ——ウェッツェルF2は個人の問題で半分、チームの設計で半分
F2が出た後に嘆いても遅い。最初の接触は胸で受け、手で止めない。序盤のP&RはDROPで受け、以降は相手ハンドラーの角度に応じてHEDGE→即リカバーへ。ここまでを段階ルールで共有していないなら、また同じ穴に落ちる。ビッグのカードは、切る前に守れ。
③ 田口離脱=重力ゼロの瞬間に、形を変えない“鈍さ”
田口が外れる=コーナー重力が消える。ならば、1プレー目から元田の連続ピン→フレア→リフトで見せ札を作るべき。常田のゴースト→ショーティ、菅原のハンマーで逆サイドを凍らせる。メザーはプローブ→ショートJの即決を一つ増やす。赤穂は“打つか即ドライブ”の二択で0.5秒の迷いを消す。形を変えずに正面衝突では、相手のヘルプに餌をやるだけ。
④ PA(ペイント)を“入口”で塞げ——受ける守備から、壊す守備へ
オーガスト級の縦圧に真正面で受けてはダメ。ショウで体を当てる→早いタグ→スクラムスイッチまでを一連で仕込む。ローメンは低すぎない位置で先置き、フィニッシュ前に足を入れ替える。セカンドチャンスは「誰が飛び、誰が押さえ、誰が拾うか」を明文化。“受け止める”から“入口で壊す”へ。
⑤ 交代とTOの目的が曖昧——“空気を変える”ではなく“景色を変える”
交代は根性ドリンクではない。1-2-2プレス/ハーフ2-3/ドリブラー当て替えの用意をして、流れが鈍んだ瞬間に「違う景色」を置く。TOはセット1本を決める時間であり、抽象的な鼓舞で終える場ではない。“主導権を奪い返す具体策”を切れ。
個人別・超辛口査定(叱咤激励)
中山拓哉——今日の「戦う温度」を一番体現。だが、無理と勇気の線引きを
後半のディナイとアタック抑止で、相手ハンドラーの息継ぎを奪った。終盤のTOは疲労のサイン。ベンチワーク側の“休ませ方”次第で、もっと効く。最初の3ポゼッションから中山の温度で入る——ここが次戦の見たい絵だ。
ヤニー・ウェッツェル——F2は論外。ただし「使い方」も半分はチームの罪
早いF2で崩壊。だが復帰後のミドル、ユーロは光。序盤はICE/DROP/スクラムの受け渡しの決めを作り、ハンドラー角度に応じたHEDGEの“逃げ道”を用意すべき。最初のファウルの質を変えろ。
アリ・メザー——突っ込み癖は“1手目の選択”で直る
ペイントタッチは作るのに、壁が見えても踏み込み過ぎる。プローブ→ショートJ、スネーク後のハンドバック再加速を1つ足すだけで世界は変わる。打開は技術より選択の順番だ。
ケアン・ピンダー——起爆装置。1本目の3Pを“用意”してあげたい
3P→スティール→ダンクの連鎖は、ベンチも会場も一気に熱を帯びる。OFファウルの焦りは織り込み済みで、トレイル3の早出し/ハンマーワンセットで最初の1本を楽に作れば、守→攻の切替えがさらに刺さる。
タナー・ライスナー——接触耐性は信頼。欲しいのは「早い深さ」
深い位置を早く取れれば、相手のローテは壊れる。ショートロール→ハンドオフで二択を増やし、隣の選手を楽にする設計を。
赤穂——迷いは罪。0.5秒の決断で生まれ変わる
ノーマークは撃つか、即ドライブ。迷いはターンオーバーの母。1本目のトレイル3を最優先で、心理的ハードルを潰そう。
元田・菅原・常田・土屋——“見せ札”の設定だけで景色が変わる
元田の縦、菅原のトレーラー3、常田のオフボールワーク、土屋のサイズ。素材は十分。元田に連ピン→フレア→リフト、菅原にハンマー、常田にゴースト→ショーティ。最初に「誰を見せ札にするか」を宣言して入れば、相手のヘルプは一気に鈍る。
ユーザー目線の「いいとこどり」——ポジ要素は確実に残す
- 4Qの守備の圧でターンを生んだ手応え。
- ピンダーのスイッチング能力と一撃の連鎖力。
- ウェッツェルの復帰後ユーロとミドル、“入口こじ開け”の置き技。
- 中山のトーンセッターぶり(次は序盤から)。
- 菅原のトレーラー3、元田のミドル、ライスナーの接触押し込み。
即効リカバリー:次戦までに必ずやる5つ
- 最初の3ポゼッションの型を固定(Horns/Iverson/Spain)。守備はICE固定+ナイル常駐でPAタッチ制限。
- ビッグのファウル段階ルール(序盤DROP→角度でHEDGE)。“想定外の笛”は2-3を1〜2回混ぜてズラす。
- 田口不在の重力再現:元田の連ピン→フレア、菅原のハンマー、常田のゴーストでコーナーの見せ札を。
- PA入口ブロック:ショウ体当て→早タグ→スクラム。セカンドは「飛ぶ/押さえる/拾う」を明文化。
- 交代とTOの目的を一本化:「相手のリズム断ち+こちらの型提示」。空気ではなく“景色”を変える。
ハイライト動画
ケンゾーHCコメント
要点:入りの強度/「戦う集団」への原点回帰。次戦は“最初の3つ”と“守備の入口”で可視化を。
選手コメント
- アリ・メザー:ペイントタッチは継続評価、ただし突っ込み過ぎを抑えるショートJの即決が課題。
- 相手選手(滋賀):オーガスト中心の内外で主導。入口を塞がなければ延々と押し込まれる——教科書通りの圧。
最後に——ブースターの声を“結果”でねじ伏せろ
「戦う集団じゃない」という批判は、今日に限れば正しい。だが烙印ではない。4Qの回収の芽と、ここまで書いた即効処方箋を“準備→徹底”するだけで、同じ負け方は止まる。分岐点は最初の3ポゼッション。水曜、結果で示せ。私たちはその瞬間の歓声を用意している。





