今日の試合の注目点
いよいよBリーグが開幕。プレシーズンの秋田ノーザンハピネッツは内容・結果ともに手応え十分でしたが、唯一のモヤモヤはキアヌ・ピンダー(Keanu Pinder)のコンディションでした。練習中のアクシデントで脳震盪の疑いと公表され、段階的復帰プロトコルに沿った慎重運用。ファンとしては「本当に開幕で走れるの?」という不安が過ったはずです。
その答えは10月4日、青学記念館のコートで出ました。ピンダーは20得点・17リバウンド。試合には敗れたものの、縦の推進力、リム上の空中戦、そしてセカンドチャンス創出でチームを牽引。本人も「準備は万全ではなかった」としながら、“土台は十分”であることを示してくれました。本稿は“応援目線×辛口スパイス”で、開幕戦の実況感を残しつつ、ピンダーの現状と10月戦線の乗り切り方を掘り下げる特集です。
試合結果・速報
2025-26B1第1節10月4日秋田 VS渋谷
Q | 秋田 | SR渋谷 |
---|---|---|
1Q | 20 | 18 |
2Q | 20 | 23 |
3Q | 19 | 16 |
4Q | 10 | 19 |
Final | 69 | 76 |
実況感で振り返る:ゲームの流れ
- 1Q—ウェッツェルのポスト起点が効き、秋田が先手。田口の45度が相手の意識を外へ広げる。
- 2Q—渋谷がディフェンスギアを上げ、肘(エルボー)起点からホーキンソンのショートロール、コーナーの射程を有効化。秋田は速攻の“出口”を作れず1点ビハインドで折り返し。
- 3Q—ここで秋田の色。ピンダーのラン&ジャンプでリムをこじ開け、アリウープで会場を沸かせる。ディフレクト→速攻がハマり59–57のリードで最終Qへ。
- 4Q—勝負どころ。渋谷ベンドラメのアタックでペイントを割られ、ホーキンソンの外(3P)に揺さぶられる。秋田はプレッシャー下で“第二解”が出ず、単調化。残り2分17秒の攻防で追い切れず、そのまま万事休す。
スタッツ&所感(秋田)
- ピンダー:20点・17REBのダブルダブル。フィニッシュの高さとリム争奪で“柱”として成立。終盤は外が入らずも、ゴール周りの圧は別格。
- ウェッツェル:序盤のポストで入口を作る。ハイローの呼吸が合うと攻撃の幅が一段広がる。
- ガード陣:3Qまでは及第点。4Qのハンドル下でプレッシャーに止められ、ショートロールや逆サイドの“次の手”が詰まったのが悔やまれる。
- フリースロー:試合全体を通して不調。3Qの“突き放せる局面”での取りこぼしが勝敗を左右。
勝敗を分けた分岐点
第3Q:フリースローで流れを作れず
試合の趨勢を左右したのは第3Qのフリースローだ。与えられた12本の機会で成功は4本のみ。ここでスコアを伸ばし切れず、空気がやや渋谷側へ傾いた。
第4Q:2点リードからの失速
最終クォーター開始時は秋田が2点を先行。しかしパスの連係ミスやトラベリングなど、避けたいミスが連続。相手の守備強度が上がる中で意思疎通が噛み合わず、この10分間の得点は二桁に届かず10点どまり。クラッチの局面でオフェンスが空回りした。
数字で見る敗因
- リバウンド:秋田39 − 渋谷43。わずかな差に見えるが、要所での一本を拾われた印象が強い。
- セカンドチャンス失点:被76点のうち20点が“取り直し”から。前日までに掲げていた「リバウンド徹底」のテーマを、決定的な時間帯で遂行し切れなかった。
指揮官は、勝負所のリバウンドから直結した失点の多さを課題として挙げ、差の大きさを悔やんだ。
- FTロス(特に3Q):2ポゼッション差を作るチャンスを逃す。
- 4Qのプレッシャー対応:P&Rの第一解(シューターの出口)が消された後、“第二解”のショートロール→ハイポ配球→弱サイドの一連が重たかった。
- 渋谷の揺さぶり:ベンドラメの縦、ホーキンソンの外でスイッチ後の再配置を崩された。
ピンダー特集:状態チェックと使い方の正解
本人談によれば、復帰前にフルコンタクト練習は4〜5回のみ。それでも20&17——これは「完全体ではない」証左であり、裏を返せば伸び代の塊です。現状での最適解は「無理に外へ引っ張らない」運用。まずは①DREB→二次ブレイクの先頭走、次に②ショートロール受け→ハイポ配球(田口・栗原の出口)、そして③トランジションの“初速役”。この3枚で彼の負荷を“賢く”増やしていくのが現実的です。
守備面ではリム周辺の滞空時間が圧倒的。スイッチ後に外へ引きずり出される時間が長いと戻りが遅れるため、タグ(目印となる声)を早くして、ローテの誤差を小さく。4Qのようなプレッシャー時は、ピンダーをハイポの中継点に据え、ハンドオフ(DHO)→リハンドオフ、あるいは“ズーム”(DHO+ダウンスクリーン)でズレを作るセットを増やしたいところです。
戦術ノート:クラッチの型をもう一度
- 第一解:エレベーター/スタガーでシューター(田口)の一本。
- 第二解:読まれた瞬間にスクリーナー(ピンダーorウェッツェル)のショートロール→ハイポ配球→コーナー(赤穂・栗原)。
- 第三解:トップロックされたらバックドア。ポップ担当(ライスナー)の“2.5人目”を用意。
辛口メモ:スタメンに“メッセージ”を
この日の先発は元田・菅原・中山・ウェッツェル・ライスナー。悪くはない。が、開幕のアウェーで主導権を握るなら、ピンダー+赤穂を同時に置く“攻撃的シグナル”もありでした。スタートの5分で“心拍数を上げる”演出は、敵地の空気を早めに奪う。次戦以降のカードで試してほしい。もちろん、出たメンバーの奮闘は称賛しつつ、です。
ハイライト動画
ケンゾーHCコメント
「開幕の入りは固くなったが、徐々にリズムは作れた。第3Qのフリースローを落とし流れを作りきれなかったこと、4Qにプレッシャーを受けてオフェンスが崩れたのが敗因。ピンダーは久々の実戦で粗さはあるが、明日は改善して臨みたい」
選手コメント
- キアヌ・ピンダー(秋田):「復帰初戦。準備段階でフルコンタクトは多くなかったが、20点17リバウンドはよかった。ただ、アウトサイドが入らなかったので、もっと上げていきたい」
- ジョシュ・ホーキンソン(SR渋谷/開幕前談話):コンディションの良さを強調しつつ、シーズン序盤のホーム戦で勢いを出したいと語っていた。実際、終盤の3Pで流れを引き寄せたのはさすが。
次戦に向けた“即効性のある”修正ポイント
- FTの再現性:ルーティンを短く、誰かが“声で肩を外す”。
- 4Qセットの合言葉:「第一解が消えたら“ショロ(ショートロール)!”」。合言葉で全員の意思決定を0.5秒前倒し。
- DREB→先頭走:赤穂の先頭走、田口のトレイル3、ピンダーのリムラン——この“絵”を毎Qで最低2回は作る。
- スタートのメッセージ:相手が機動系なら、ピンダー+赤穂で最初に圧をかける。ライスナーのポップは2ndユニットで効かせるのも手。
白星発進はならなかったが、シーズンは始まったばかり。ヘッドコーチは「初戦は取りたかったが、試合を重ねながら良化させていく」と前を向く。改善のポイントは明快だ。
- フリースローの立て直し:第3Qの失速要因を即修正。ルーティンの再確認とメンタルの共有を。
- 終盤のボールセキュリティ:高強度DFに対しても、パスコースと足運びの基本を再徹底。ハンドラーと受け手の約束事を明文化する。
- 要所のリバウンド:“誰が弾き、誰が拾い、誰が走るか”の役割をコールで明確化。セカンドチャンスの失点を半減させたい。
収穫と課題が同時に見えた開幕戦。ピンダーのフィジカルとリム支配を軸に、終盤の細部とリバウンドの一本を積み上げられれば、次の勝機は近い。
最後に
開幕黒星はほろ苦い。でも、心配のタネだった「ピンダーの状態」は、数字とインパクトで大きく前進が確認できました。必要なのは、“速くて丁寧”という今季スローガンの具体化。TOを減らし、FTの価値を取りこぼさず、クラッチの第二解まで「共通理解」を徹底すること。そのうえで、スタメンや終盤の組み合わせで“攻撃的メッセージ”を打ち出せば、アウェー続きの10月も必ず乗り切れるはず。次戦、もう一歩前へ。ハピネッツの底力は、ここからだ。