今日の試合の注目点
秋田ノーザンハピネッツが東北カップ2025で3年ぶりの優勝。しかも負傷者が相次ぎロースター9人という苦しい編成の中で、最後までスタイルを崩さずに戦い抜きました。決勝の相手は宿敵・仙台89ERS。立ち上がりから集中した守備で主導権を握り、終始リードを許さない試合運びで78-69の完勝です。ケンゾーHC(前田顕蔵)の言葉どおり、「今季体現したいこと」を40分やり切った価値ある一勝。ブースター目線でも“これぞ秋田”と言いたくなる内容でした。
ゲームの鍵はふたつ。ひとつは序盤でのディフェンス優位を点差に変えられたこと。もうひとつは、仙台の追い上げ局面(3Q)でも慌てず、リズムを取り戻して最終Qで押し切れたことです。特に日本人選手のペリメーターディフェンスは圧巻で、仙台のトランジションを何度も鈍らせました。相手のミスに乗じるだけでなく、自分たちで「止める→走る」を作れたのが強みでした。
試合結果・速報
2025-26東北カップ 秋田ノーザンハピネッツ vs 仙台89ERS(決勝)
チーム | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
秋田 | 22 | 17 | 18 | 21 | 78 |
仙台 | 10 | 16 | 23 | 20 | 69 |
※会場:盛岡タカヤアリーナ(9月15日/決勝)。秋田は立ち上がりの22-10が効き、その後は一度もリードを許さずにフィニッシュ。
試合内容・ゲームの流れ
1Q:秋田の守備がいきなり機能。ギャップに素早く2ndヘルプが寄り、仙台の最初のセットを寸断。ここで生まれたトランジションからの加点で22-10。勢いを作ったのは中山拓哉。ミドルと仕掛けで連続得点し、ベンチも一気にヒートアップ。}
2Q:仙台はオフボールのスクリーンから外角を当て直し、スコアは拮抗。ただ秋田はファウルをコントロールしつつ、ハーフコートでのズレ消し(ナビ→入れ替え→クローズアウト)を徹底し、前半を39-26相当の流れで折り返します(実際の合計は1Q+2Qで39-26)。
3Q:仙台がアジャスト。オフェンスリバウンドやドライブキックで食らいつき、このQは23-18で仙台。特に岡島和真の3Pは脅威で、ディフェンスのズレを逃さないキャッチ&シュートは高精度でした。とはいえ秋田はリードをキープ。
4Q:流れを立て直した秋田は、要所で田口成浩キャプテンの3P、メザーのフィニッシュが決まり再加速。ディフェンスはハイ2-3気味のゾーンも織り交ぜ、仙台の連続加点を許さず勝負あり。
注目・活躍した選手
- 中山拓哉:チーム最多の17得点。速攻でもハーフコートでも“欲しい場面”で取り切った勝負強さが光りました。
- 田口成浩:要所での3Pが流れを引き戻す起爆剤に。決勝では4本の3Pを沈め、メンタルリーダーとしても存在感。
- アリ・メザー:コート両端でタスクをやり切り、後半の追い上げ局面でもゲームプラン遂行を徹底。安定感のある終盤の得点が効きました。
- 仙台・岡島和真:チーム最多の18得点。仙台の反撃をけん引したが、秋田のゾーン&外角チェックを最後まで崩し切れず。
辛口メモ(ブースター目線)
今日の秋田はペリメーターディフェンスとトランジションの帰陣が素晴らしい出来。2対5で守り切るような戻りの速さも何度か見られ、チームフィットネスのベースが感じられました。一方で、相手(仙台)の出来に助けられた面もゼロではありません。特に3Qの被3Pはまだ抑えたい。準決勝・岩手戦で露呈した課題(FTの精度、オフボール3P対応)も、シーズンに向けて引き続き改善ポイントです。
個人面では、カルバーの仕掛けを赤穂のオンボール守備が止め、そこから田口の3Pにつなげた印象的なシーンも。フィジカルで押し切るのではなく、角度と体の入れ方で優位を作った“秋田らしい”止め方でした(ブースター所感)。
トピックスで振り返る“秋田の勝因”
① 立ち上がりの徹底度:1Qでターンオーバー誘発→速攻という“勝ちパターン”を早々に体現。ここでの12点差が最後まで効きました。
② ゾーンの使いどころ:仙台は東北カップ3連覇を狙う中、秋田のゾーンを最後まで攻略できず。外は当たっても、インサイドで連続して優位を作らせなかったのが大きい。
③ 9人ローテの結束力:満身創痍でも“やること”をぶらさず、キャプテン田口が言う「9人でも10人でもやれる」を体現。数字以上に、チームのコミットメントが上がっているのが伝わりました。
大会の位置づけ(準決勝・1回戦ふりかえり)
準決勝(vs岩手)78-76:典型的なシーソーゲーム。前半は相手の走力に押されるも、ハーフタイムの修正が機能。後半は失点を抑えて競り勝ち。FTの落ちや3P対応は今後の課題に。
1回戦(vs福島)85-57:前週の失点の多さを受けて守備にフォーカスした一戦。「50点削る」意識で臨み、実際に被得点を大幅に抑えて快勝。
ハイライト動画
今回はありません。
ケンゾーHCコメント
「苦しい状況の中でも、自分たちのやりたいバスケットを貫いた。選手がそれぞれの良さを出し合い、粘って粘って戦ってくれたことが本当にうれしい」。被災地への募金活動にも触れ、勝利を秋田と共有できた喜びを語りました(要旨)。
選手コメント
- アリ・メザー:「前田HCのゲームプランを最初から最後まで遂行しただけ。それが得点にもつながった」(要旨)。
- 田口成浩:「9人でも10人でもやれることを証明できた。全員そろった時に、もっと力を発揮する姿を届けたい」(要旨)。
- 中山拓哉:チーム最多の17得点で勝利の立役者に(記事要旨)。
- 仙台・岡島和真:チーム最多の18得点で存在感(クラブXの試合後ポスト)。
観戦メモ・掘り下げ(決勝 vs 仙台)
赤穂のドライブ止め→田口の3Pが象徴した“守って走る”連鎖
この試合を語るうえで外せないのが、オンボールでドライブの鼻先を折る守備→素早い切り替え→田口のトレーラー3Pという秋田の“連鎖”。赤穂の足運びと体の入れ方が見事で、カルバーの最初の一歩に対して胸を当てる→進行方向を限定→ヘルプとチャージングラインをチラつかせてピックアップ(ドリブルの停止)を強要。ここで生まれた半歩の優位が走りの合図になり、田口はコーナーまで走り切るか、トップのトレーラー位置に入ってキャッチ&シュート。1Qの22-10という出足(決勝の各Qは22-10、17-16、18-23、21-20)も、この“守って走る”の再現性が押し上げたと言えます。相手の上手下手ではなく、秋田が自分たちの型で主導権を握った——ここが今季の希望材料です。
仙台・岡島の3P量産は“やられ過ぎ”の印象——対策は誰が・どこで・どう詰めるか
仙台の反撃を最も強く体感させたのは岡島の外角。3Qを23-18で仙台が奪った時間帯、彼のキャッチ&シュートに対し、スクリーン上の“通過角度”が甘くなる場面が散見。対策の優先順位は(1)ボールマンに圧をかけて強いパスを許さない(2)岡島の肩越しに追うトップロック気味の追走(3)強サイドの“見送るヘルプ”を減らし、ハイタグの位置を半歩前に。加えて、スイッチ後に弱サイドが“早戻り”する合言葉を徹底し、ペイント収縮→外へ再展開のテンポを遅らせたいところ。秋田のゾーン混用は効いていただけに、人への受け渡しとローテの一拍を詰めるだけで被弾は確実に減らせます。
カルバーの判断・決定力に疑問/ダーウィッチ不調気味——秋田の“見せ方”が効いた
カルバーには「仕掛けを誘ってから止める」秋田の狙いがはまった印象。ミドルの一歩手前で止めさせる“見せ方”、サイドラインを“もう一本のDF”として使う追い込み、ギャップヘルプの差し込みで選択肢を削り、無理なアタックと消極的なキックの両方を引き出しました。トランジションでも数的優位を“自分で完結させない”場面が出たのは、秋田のリムプロテクトとリムパスカットを同時にチラつかせる配置勝ち。ダーウィッチについてもリズムを与えない当たり方で、最初の成功体験を作らせなかったことが後半まで尾を引いたとみます。数値面の検証(失点時の起点、カルバーのペイント試投数、ダーウィッチのタッチ数)は公表データを待って追記しますが、“相手の強みを触らせない”守備設計は今季の武器になり得ます。
仙台のトランジション戻りの遅さ——秋田の切り替え勝ちで主導権
切り替え局面は秋田が優勢。2対5でも守り切る帰陣の速さと、リバウンド確保→最初の3歩のスプリントが徹底され、仙台の“走り返し”が一瞬遅れるだけでアーリーオフェンスの選択肢が増える構図に。決勝の1Qで二桁リードを確保できた背景には、失点直後も走り負けない習慣が如実に表れています。仙台はゾーン攻略に手間取りハーフコートの攻防が増えたぶん、戻りの意識と隊列の再編が後手に。秋田はこの部分を強度高く継続できれば、レギュラーシーズンでもゲームの“温度”を自分たちで決められます。
次戦以降へのチェックポイント(数値裏取りの素案)
- トランジション効率:Fast Break Pts と Secondary Break の合算、被トランジション失点の内訳(レイアップ/コーナー3)。
- ペリメーターディフェンス:岡島ら指定シューターの被eFG%、強サイドキックアウトからの被3Pの本数・確率。
- 決勝3Qの修正:ポップアウト対応時のスイッチ後ローテ時間、タグの深さ、ボールプレッシャーの回数。
- 主力スコアラー対策:カルバーのドライブ方向別の被効率(右・左・中)、ダーウィッチのポストタッチ数とダブル後の被効率。
- リバウンド連鎖:DFR→アウトレット→最初の3歩の達成率(動画クリップで主観採点→チームKPI化)。
上記は“所感を事実に落とす”ための物差しです。東北カップはプレシーズンゆえ公式の細データが出にくい大会ですが、クラブの試合レポートや地元紙、相手クラブの発信から拾える一次情報と映像確認で、定点観測として積み上げます。公開された時点で該当セクションに追記しましょう。
まとめ:赤穂の“止める”と田口の“決める”が象徴したように、秋田は守備→走る→外のご褒美という美しい連鎖を返り咲かせました。一方で、岡島の外角に対するローテの一拍、3Qの受け身時間帯は改善の余地。プレシーズンでここまで出せているなら、細部の1%を詰めるだけで勝ちグセはもっと強くなるはず。次のゲームでも“型の再現性”を確認していきましょう。
最後に
秋田の「守って走る」は、プレシーズンの段階で確かな再現性を見せました。もちろん、被3Pの抑制やFT精度など、伸びしろもまだまだあります。でも、ロースター9人でこれだけの完成度を示せたのは大きい。“秋田のディフェンス”は今季もしっかり健在。この勢いでホームのプレシーズン(京都戦)からレギュラーシーズンへとつなげていきましょう。
決勝での完勝、そして3年ぶりの栄冠。ブースターとしては、あの優勝写真を見返すたびに胸が熱くなります。チーム、スタッフ、そして現地・配信で支えたすべての皆さんに「おめでとう」と「ありがとう」を。